メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

読書・映画・音楽

エプスタインというエロ事師

www.cnn.co.jp 年明けに「故エプスタイン氏の関連文書が公開」というニュースが報じられていた。 米国の富豪エプスタイン氏は、児童への性的な暴力で逮捕され、拘置所で自殺したことが知られている。 知己の富豪や有力者へ売春を斡旋していた疑いもあり、そ…

心を震わせる音楽

今まで色んな音楽を聴いてきたけれど、最も多く聴いたのはベートーヴェンとモーツァルトの曲だったと思う。 これに続くのは、それほど沢山の曲を聴いたわけじゃないが、バッハやブラームス、チャイコフスキー、シューベルトなどだろう。 チャイコフスキーを…

新年の読書「クオ・ワディス」

年末年始の休暇を利用して、以前から読んでみようと思いながら、なかなか手がつかなかった「クオ・ワディス」(全三巻:岩波文庫)を読んだ。 4日までの休暇中に全て読み終わらせるつもりでいたけれど、そう巧くは行かなかった。 しかし、下巻は、昨日、ほぼ…

「栄光への脱出」

www.youtube.com 1960年の米国映画「栄光への脱出」。未だに本編を観ていないが、テーマ曲は20代の頃に聴いて以来、とても好きな映画音楽の一つになっている。 映画はイスラエルの建国に纏わる物語で、キプロス島に勾留されていたユダヤ人らがパレスチ…

ギリシャ語の歌で思い出すクズルック村の日々

www.youtube.com このギリシャの歌を聴いたのは23年前、2000年頃ではなかったかと思う。イスタンブールはイスティックラル通りのCD店に流れていた。 店の人に「なんていう歌?」と訊いたところ、CDのジャケットを示しながら、「このCDに入ってい…

日本は何処で道を間違えたのか?

SNS上の投稿を読んだだけで、何処まで理解できているのか心許ないが、韓国・朝鮮の研究で知られる政治学者の木村幹氏によると、伊藤博文は当初より朝鮮に対して高圧的な態度で臨んだため、朝鮮の人々から嫌悪されたという。詳しくは木村幹氏の著作である…

すべては霧の中?/エリア・カザンがカメオ出演したトルコの映画

1988年制作のトルコ映画「Sis(霧)」、日本では89年か90年に封切りされ、私はそれを新宿の映画館で観た。既にトルコ語を学び始めていたから、少しでも単語を聞き取ろうしたが、解ったのは「メルハバ」といった挨拶の言葉ぐらいだった。 緊張感のあ…

イスラムの芸術/聖書を題材にした小説

イスラムにも美術的な作品は多い。モスクには美しい装飾が施されていたりする。 しかし、コーランが小説や映画の題材として適しているようにも思えない。そういった作品があったしても、それほど読んでみたいとは思わない。あまり面白くなさそうである。 聖…

エデンの東

最近、ネットからトルコ語で視聴するのは報道番組ばかりになってしまったが、以前は洋画のトルコ語吹き替え版を良く観ていた。その多くは「ローマの休日」といったクラシックな作品である。 もちろん、これはトルコ語の学習を兼ねている。しかし、トルコ語の…

第一次世界大戦の捕虜が収容されていた姫路の景福寺

8月16日、姫路の方まで出かけて見た。15日に「多民族帝国の崩壊と国民国家の成立は何をもたらしたのか?」という駄文でお伝えした「さまよえるハプスブルク」に、第一次世界大戦中、ハプスブルク帝国の軍人兵士らが捕虜として「姫路の景福寺」に収容さ…

多民族帝国の崩壊と国民国家の成立は何をもたらしたのか?

6月末に姫路のジュンク堂で購入したのは中公新書の「スターリン」だけじゃなかった。 そのもう一冊「さまよえるハプスブルク」もこの長期休暇を利用して読もうと思っていたが、結局、後半の部分はざっと読み流しただけで一応読了ということにした。 カバー…

スターリンとエルドアン

11日から勤務先は盆休みに入っている。福岡の配送センターも三宮の警備員の職場も年中無休で盆や正月に長期休暇などなかったから何だか奇妙な感じがする。 当初はこの休暇を利用して、東京に行って来る予定だったが、母の容態もあり、いつでも鹿児島へ行け…

音楽のある暮らし

日々の生活の中で息苦しさを感じたら、人はそれを癒すために何をするだろう。私は音楽を聴くことで最も癒されてきたのではないかと思う。 もちろん、音楽を聴くのは、息苦しさを癒す時ばかりじゃない。楽しかったり悲しかったりと様々な気分に合わせて聴く。…

読む本は自分の判断で選ぶ?

このYouTubeのチャンネルの動画がとても面白い。他にもトルコの人たちがやっているチャンネルには面白い紀行動画が多い。 しかし、こうなるとテレビの紀行番組は、大掛かりな取材でもしない限り、存在価値を維持できなくなってしまうかもしれない。 (例えば…

「日本の作家は文学的なエロチズムの巨匠である」:サルマン・ラシュディー

この「ノルウェイの森」の書評のトルコ語原文をネット検索で探してみたけれど見つからなかった。 書評が掲載されたラディカル紙は、既に発行を止めているので多くの記事が失われてしまったようだ。日本語訳は、以前、私が拙訳して保存してあったものである。…

「ノルウェイの森」には日本の歌が1曲も出てこない?

村上春樹の小説から「八月の濡れた砂」が思い出されたような話を書いたけれど、おそらく、村上春樹の小説に「八月の濡れた砂」が出て来る場面などないと思う。 それどころか、「ノルウェイの森」には、日本の歌が1曲も登場していないそうだ。 2004年の…

そういえば「八月の濡れた砂」を聴いていなかった・・・。

現在の警備員の職場は、朝8時から翌朝の8時まで24時間勤務して、2~3日の休みが入るという変則的なシフトになっている。 場合によっては、4日休みが続くこともあれば、1日挟んでまた勤務になったりする。 今日は、その「連勤」の間の日で、朝、夜勤…

「イルマーレ」と「This never happened before」

「イルマーレ」という米国の映画を、私は2008~9年頃にイスタンブールからイズミルへ向かう長距離バスの中で観た。 現在と過去が交差する筋立ての面白さに引き寄せられて暫く観ていると、劇中にポール・マッカートニーの歌声が流れて来たのである。 初…

「女性は悪魔か偽善者か?」

《2014年1月28日付け記事の再録》“漱石の罠”なんてつまらない話を書いて、漱石が主張した“無意識の偽善”を批判したけれど、あれが“則天去私”を求め、この世の平和を願った夏目漱石の思想なのかもしれない。 例えば、“アッサラーム”と唱え、やはりこの…

「テルアビブの女たち」

今朝、「テルアビブの女たち」というイスラエルの映画をトルコ語吹き替え版で観た。(トルコ語の表題は「Duvarlar Arasında」:壁の間で) テルアビブのアパートで同居しているレイラ、サルマ、ヌールという3人のパレスチナ人女性が、男性権威的な社会に抵…

「紫禁城の黄昏」:中国の文民統制

先日、岩波文庫の「紫禁城の黄昏」を読了した。 「紫禁城の黄昏」を読んでみようと思ったのは、「清朝の滅亡からラストエンペラー愛新覚羅溥儀が満州国の皇帝に即位するまでの史実に興味を感じた」ためではなかった。 溥儀の家庭教師であった著者ジョンスト…

「断絶された朝鮮の歴史」:多民族国家だった戦前の日本

《2014年2月6日付け記事を一部書き改めて再録》 1986年頃だったと思う。韓国関連の本の中で、司馬遼太郎と鮮于煇(ソヌ・フィ)の対談に、強い感銘を受けた。鮮于煇は、韓国の小説家で、司馬遼太郎とほぼ同年輩の人物である。それが対談の中の会話だ…

「Vフォー・ヴェンデッタ」:恐怖による統治

この「Vフォー・ヴェンデッタ」という映画は、12~3年前、イスタンブールからイズミルへ行く長距離バスの中で観たのではないかと思う。 そもそも、私がこの20年ぐらいの間に観た欧米の映画は、その殆どをトルコの長距離バスの中で観たのである。 トルコ…

「細雪」の時代と結核

「細雪」は、1936年(昭和11年)から1941年(昭和16年)までの時代を背景に描かれている。 当時は、結核が死病と恐れられていた。 以下の「結核死亡数および死亡率の年次推移」を見ると、1936年の結核による死亡者は14万5千人、1941…

まだまだ続く長く曲がりくねった道

昨日、6月20日は私の誕生日だった。 かつては、1年の区切りとして正月を意識することがあっても、誕生日などは知らぬ間に過ぎていた。 ところが、「Facebook」等を使い始めたら、自動的に誕生日が通知され、友人たちから祝いの言葉が届くようになり、否…

去勢された黄門様?

最近、テレビ時代劇の「水戸黄門」を観る機会が何度かあった。いずれも里見浩太朗が黄門を演じていたから、最後のシリーズの作品ではなかったかと思う。それでも、10~15年前に放送されたものだろう。 観ていて『おや?』と思ったのは、劇中でまず人が死…

東山魁夷展

昨日は、夜勤明けに神戸博物館で東山魁夷展を見てきた。 こういった美術の展覧会に足を運ぶことは殆どなかった。音楽のコンサートなどを聴きに行くこともない。 芸術を大勢の人たちと一緒に鑑賞するのは、ちょっと気が引けるように感じてしまう。 情けないこ…

「チャルクシュ(Çalıkuşu)」を歩きたい!

上記の駄文を書くにあたって、本山第二小学校の校舎が当時のものであるのか調べるために、ネットで検索していたら、「谷崎潤一郎の『細雪』を歩く」というもの凄いサイトを発見した。 「芦屋編」に始まり、「西宮編」「阪神大水害編」「京都編」「大阪編」「…

「細雪」~トルコ料理~「汾酒」

一昨日は、住吉川から蘆屋の辺り一帯を歩き、蘆屋川(阪急)から300mほどの所にある、トルコ人の旧友が営む料理店に寄った。「細雪」の家族の家は、そのもう少し先に位置していたことになっている。 旧友の料理店で昼を食べてから、また阪神の蘆屋まで歩…

「細雪」を歩く・大水害

「細雪」を読み返して、その舞台となった街を歩いてみようと思ったのは、昭和13年の阪神大水害の場面が非常に印象に残っていたからだ。 巻末の谷崎潤一郎自身の「回顧」によれば、実際の経験を書いたのではないかと思った読者が少なくなかったという。迫真…