メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

「女性は悪魔か偽善者か?」

《2014年1月28日付け記事の再録》漱石の罠”なんてつまらない話を書いて、漱石が主張した“無意識の偽善”を批判したけれど、あれが“則天去私”を求め、この世の平和を願った夏目漱石の思想なのかもしれない。 
例えば、“アッサラーム”と唱え、やはりこの世の平和を願ってイスラム教を起こしたムハンマドは、「女性は男に性欲を喚起させる悪魔(シャイターン)の如き存在である」と言って戒めたが、“無意識の偽善”も女性を偽善者と看做して警戒するように説いた言葉ではないだろうか。 
これが解らない男たちは、悪魔や偽善者から気に入られようとして、媚びへつらうばかりでなく、恋敵と無用な争いを生じさせて、自分の心の平穏ばかりか、この世の平和まで乱してしまう。 

動物のオスは、メスを争う時に、牙をむいて最も凶暴になる。人の世の禍々しい事件の裏にも大概男と女の葛藤がある。これを遮断してしまえば、世界はかなり平和になるに違いない。 
私はサウジアラビアの社会を良く知らないが、イスタンブールで黒いベールを被った奥方(2~3人いる場合もある)を連れて歩いているサウジアラビアの男たちは、モジャモジャした顎鬚でいかめしく感じられるものの、その目を見ると、何だかポワーンとのんびりしていて優しげである。
彼らは恋愛という壮絶な戦いを経て来ていないから、やはりのんびりして優しいのかもしれない。サウジアラビアの社会には、あまり“いじめ”もないような気がする。

動物のオスには攻撃性がある。人間も例外ではない。セックスで、オスは必ず攻撃的になっているからだ。なにしろ、肉体の醜悪な一部を、美しい相手の肉体に突き入れるのだから、攻撃性がなければ出来ない所業だろう。
昔、あるテレビ番組で、田嶋女史が「いつか男を強姦してやりたい」と語ったら、ビートたけし氏は、「そりゃ無理だよ、先生。モノが入って来た瞬間に、強姦されたのは自分であることが解るよ」といったように答えていた。これ以上の名答はないと思う。
男は立たなきゃ出来ないし、立てば、それはやる気があったということで、後から「無理やりやらされました」なんて言い訳はできない。男はいつでも攻撃する側である。
だから、性行為があって、女性が「強姦された」と訴えれば、合意があったとかないとか論じるまでもなく、男を処罰しても構わないのではないかとさえ考えている。

斯く言う私も、世間では役立たずだが、未だにアレだけは立つ。ということは、虫も殺さぬような顔して、ちゃんと動物のオス的な攻撃性を備えているのだろう。でも、立ったところで、20年近く行使していないから、かなり平和な存在と言える。
このように平和なフェミニストである私は、AV等を鑑賞する際も“女性上位”とか“対面座位”の場面を激しく好む。
ところが、どういうわけかエロ夢に身もだえして眼が覚めると、夢の中の私は、必ずと言って良いほど、後背位か正上位なのである。思い返して、その秘めたる攻撃性にビクッとする。
普段、“女性上位”の場面を好んでいるのは、よほどか、この己の内に潜む攻撃性に気づきたくないからなのだろう。私は、こういう姑息で疚しいオスなのだ。
しかし、“無意識の偽善”を疑ったわけじゃないが、思春期を迎えても、殆ど相手にされなかった所為か、あまり女の子に媚を売ることは無かった。

20代になって、ダンプをやっていた頃は、もう女性とは風俗でしか接触する機会がなくなり、女性に媚を売ってみようなんて気持ちは殆ど消えてしまった。身嗜みなど気にすることもなく、男が鏡を見たりするのは恥ずかしいことだと信じていた。なかなか超然とした気風があったと思う。 
20代の後半になって、韓国へ留学し、ソウルの語学学校に入ると、事情が一変した。教室には、若い娘という“無意識の偽善者”が満ち溢れていた。それで、さすがに、ある程度身嗜みは整えたけれど、相変わらず、頭の寝癖はそのまま、無精髭もあまり剃らなかったし、おそらく鼻毛も伸びていた。 

教室では、「ソウル・ランド、RをPに変えれば、もっと楽しいソープ・ランド」などと爽快なギャグを飛ばして、“無意識の偽善者”どもに退場を求められると、超然と教室を後にして、一顧だにしなかった。 
私は、教室で“無意識の偽善者”らに囲まれていながら、一度たりともこやつらに媚を売ることはなかった。我ながらあっぱれだったと思う。 
それが30歳を過ぎて、世間の醜い風に触れ、私はこの“超然とした気風”を失ってしまった。女性に媚を売ることを覚えたけれど、適切な時期に学ばなかった所為か、あまり巧く行った試しがない。 
しかし、もうあの気風を取り戻すのは無理だろう。これからも媚を売って叶わぬまま、泥沼の中でもがき続けるに違いない。南無阿弥陀仏。人生は悲しい。

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