メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

イスラム

トルコはいよいよエネルギー全開か?

イスタンブールの街角で、運転手がサンドイッチを食べながらトラックを走らせているのを見て驚いたのは2014年のことだった。 そうやって、トルコの人たちがガツガツ働くようになったのは、いつ頃からなのだろう? 1999年~2002年、私がアダパザ…

アルコールは一滴も飲んではならない/宗教で無理強いがあってはならない

10年ほど前、2012年か2013年だったと思う。イスタンブールのユルドゥズ工科大学にイスラム神学部の先生を訪ねたところ、先生はパソコンで何やら執筆中という様子だった。 挨拶すると、パソコンの画面から顔を上げて、「今、聖典によればアルコール…

プーチン大統領によるイスラムの挨拶

トルコのメディアが「プーチン大統領によるイスラムの挨拶」を報じている。 ロシア国内のイスラム教徒との対話集会に出席したプーチン大統領は、ロシアのイスラム教指導者がイスラム式にアラビア語で「アッサラームアライクム」と挨拶してからロシア語で質問…

イスラムの葬儀は望まない!

トルコで非常にイスラム的な新聞として知られているイエニ・アキット紙に、今日(9月18日)、以下のような記事が出ていた。 「イスラムの価値に敵対しながら一生を終えた人たちも、モスクでイマームの祈祷により弔われることが論議を呼んでいるトルコで、…

トルコにおけるクルド人とイスラムの問題

《2023年6月18日付けの記事を省略修正して再録》 トルコの米国に従わない姿勢が顕著になった2013年以降、トルコに対するネガティブな報道は執拗に続けられてきたのではないかと思う。 いつだったか(3~5年前?)、池上彰氏が司会を務める番組…

トルコのイスラム化?

11年ほど前、トルコの宗教教育の状況を調べるために来た日本の研究者の方たちとイスタンブール市内のイスラム導師養成高校(イマーム・ハティップ・リセスィ/İmam Hatip Lisesi/イスラムの教育に重点を置いた高校)を訪れた。 そこは導師養成高校の中で…

トルコとイランの世俗化

www.youtube.com 最近、このようなイランの状況を伝える動画がYouTubeにたくさんアップされている。 動画を見ると、街角を行く女性の多くはスカーフを被っていない。 昨年、スカーフを正しく被っていなかったとして道徳警察に逮捕された女性が死亡した事件の…

クルド系トルコ人の産廃業者による不法投棄の問題

埼玉県の蕨市が「ワラビスタン」などと呼ばれ始めたのは、いつ頃からだろう? 既に20年以上経っているのではないかと思う。 多くのクルド系トルコ人が居住するようになったため、どうやら「クルディスタン」をもじって「ワラビスタン」になったらしい。 最…

諸行無常/因果はめぐる糸車

《2020年5月27日付け記事の後半の部分を修正して再録》 2005年1月21日付けトルコのラディカル紙のコラムで、ヌライ・メルト氏はイスラムの犠牲祭に関連して以下のように述べていた。 「この世界で生きることにはそれなりの代価があるはずだ。私たちの…

イラン・イスラム体制の危機

1991年に、イズミルでトルコ語学校に通っていた頃、東京大学を退官されてからトルコ研究に来られていた老先生と知り合った。 先生は長年にわたってイランの農村の研究に携わって来られた方だ。そのため、先生が大学を退官されてからトルコの研究を始めた…

宗教よりも言語の繋がり?/イランの問題

モルドバ共和国のガガウズ人のルーツが何処にあるのかはともかく、トルコ共和国政府が自治区に学校を設立するなどして、ガガウズ人との連帯を進めているのは非常に興味深い。ガガウズ人はトルコ語に近い言語を話すものの、キリスト教徒であるからだ。 イスラ…

イスラムの芸術/聖書を題材にした小説

イスラムにも美術的な作品は多い。モスクには美しい装飾が施されていたりする。 しかし、コーランが小説や映画の題材として適しているようにも思えない。そういった作品があったしても、それほど読んでみたいとは思わない。あまり面白くなさそうである。 聖…

イスラムは「之を知らしむべからず」なのだろうか?

「エデンの東」の最後の場面を観ながら、やはり聖書は読んでおくべきじゃないかと思ったが、これだけ長い間、ムスリムの人たちと交流を持ち、イスラムとは何なのか考えさせられてきたのだから、もちろんコーランも全編を読んでみなければならないだろう。 し…

王将のムーシューロウ/中国の清真料理

上記の駄文に、「餃子の王将」では、いつもニラレバと餃子ばかり食べているような話を書いてしまったが、昨日はムーシューロウと餃子だった。ムーシューロウも美味い。 王将のメニューには「肉と卵のいりつけ」と記されているけれど、厨房へオーダーを通す際…

豚の皮のお菓子「チチャロン」

加古川の市内に「マリポサのチチャロン」という屋台のような小さな店がある。配送のトラックで毎日のように前を通るため、1月からこの仕事を始めて以来、とても気になっていたけれど、「火・水・木」は休業と貼り出されているばかりでなく、週末もやってい…

イランとトルコのスカーフの問題

イランで、スカーフを正しく被っていなかったとして道徳警察に逮捕された女性が死亡した事件に端を発した抗議活動は、激しい弾圧にも拘わらず勢いを増しているという。 イラン政府が「スカーフを外す自由」を認めて収拾を図ってくれたら良いが、果たしてどう…

トルコとギリシャの緊張/トルコの中にあるギリシャ的な要素?

トルコでも、ロシアによるウクライナ4州の併合は大きな話題になっているけれど、このところトルコの時事討論番組で最も多く取り上げられている外交問題は「トルコとギリシャの間に高まっている緊張」ではないかと思う。 最近、米国は、ギリシャのトルコ国境…

トルコ共和国は地域の平和の要

上記の駄文でお伝えしたように、かつては反イスラム的と思われていた共産主義者のドウ・ペリンチェク氏も今はイスラムを否定していない。それと共に、オスマン帝国の歴史も肯定的に語るようになったのではないかと思う。 ペリンチェク氏に限らず、多くの左派…

共産主義者ドウ・ペリンチェク氏のイスラム?

トルコの上海協力機構への加盟を巡る議論、断固反米の姿勢で知られる祖国党のドウ・ペリンチェク氏は、加盟と共にNATOからの脱退を強く主張している。 祖国党は2015年までの「労働者党」であり、ペリンチェク氏は共産主義による革命を標榜していた。…

トルコで宗派間の対立は解消されるのか?

トルコでは、イスラムの異端とされるアレヴィー派の人々が断食を行うムハレム月に入ってから、アレヴィー派の礼拝所であるジェムエヴィが立て続けに襲撃されるという事件があった。 犯人らは直ぐに逮捕されたそうだが、背景等は未だ明らかになっていないらし…

アーシューラー「シーア派の熱狂とキリスト教」

《2020年8月28日付け記事を修正省略して再録》 昨日(2022年8月8日)は、イスラム暦によるムハレム月の10日目「アーシューラー」の日だった。 西暦680年のこの日に、イマーム・フサインが「カルバラーの戦い」で殺害されたため、シーア派…

「犠牲祭の意義」

《2012年10月27日付け記事の再々録》 2011年の秋、トルコで有数の肉加工品会社を訪れたことがある。 トルコ風の牛肉ソーセージ(?)スジュクや牛肉ハムのパストゥルマが有名な老舗で、オスマン帝国の末期に、中部アナトリアのカイセリの特産品…

政教分離がイスラムを守っている?

数カ月前のことで、詳細の記憶も曖昧になっているが、トルコの宗務庁のイマーム(イスラム教導師)が「海老やイカもハラーム(禁忌)である」という見解をネットの記事で明らかにして物議を醸していた。 トルコでは、一般的に、イスラムの教義上ハラーム(禁…

東京ジャーミー(モスク)/トルコのイスラムの常識

2003年、私はトルコ人の友人と共に東京ジャーミー(モスク)を訪れたことがあった。 東京ジャーミー(モスク)は、2000年に再建されて以来、トルコ共和国の宗務庁が管理し、イマーム(イスラム教導師)も宗務庁から派遣されている。 トルコ人の友人…

経済的な価値と社会的なステータス/アフガニスタンの女性問題

私は30歳になってからトルコ語を学び始め、都合20年以上トルコで暮らした末、4年前に素寒貧の状態で日本へ帰って来た。トルコ語を学んだことで手にした経済的な価値であるとか社会的なステータスなど、もちろん何処にもない。 それでも私は、トルコで様…

「トルコの社会の分断と対立」

《2020年10月26日付けの記事を修正して再録》 私はトルコで、まず1991年~94年まで3年間暮らし、それから4年間のブランクを経て1998年~2017年まで過ごした。 私が初めてトルコを訪れてから、既に30年が過ぎようとしている。この…

縁起の良い日は昼飯も美味しい!

今日の夜勤明け散歩は、勤務地のポートアイランドから三宮、新神戸、北野、元町というコースだった。 昼飯を神戸モスクの近くにある「シャワルマ」というケバブ屋さんで食べようと計画したため、開店の11時に合わせたコースになった。 また、今日はイスラ…

ギリシャ正教会のエルピドフォロス大司教と宗務庁のエルバシュ長官

9月20日、ニューヨークで「Türkevi(Turkish House)」のオープニング式典がエルドアン大統領臨席のもとで執り行われた。 「Türkevi(Turkish House)」は、とりあえず「トルコ館」と日本語に訳して置く。 トルコ館は、1977年にIBMの社屋をトルコ…

「恐ろしい宗教」

《2016年10月15日の記事を再録》 イスラム教徒・ムスリムと言えば、何だか、まるで価値体系の異なる宗教的な世界で生きている人々みたいな雰囲気で語られたりしているけれど、トルコでイスラム教徒の人たちと接している限り、これが実際の様相を伝え…

「イスラムはどういう宗教なのか?」

《2019年11月1日の記事を再録》 日本でイスラムの社会について解説された記事を読んでみると、イスラムの教義から説き起こしている例が少なくない。 しかし、トルコでは、敬虔な信者であっても、教義を事細かに知っている人はそれほどいないだろう。 …