メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

イスラム

「イスラムはどういう宗教なのか?」

《2019年11月1日の記事を再録》 日本でイスラムの社会について解説された記事を読んでみると、イスラムの教義から説き起こしている例が少なくない。 しかし、トルコでは、敬虔な信者であっても、教義を事細かに知っている人はそれほどいないだろう。 …

シーア派の祭典アーシューラー

今日は、イスラム暦のムハレム月の10日目「アーシューラー」の日に当たるそうだ。 西暦680年のこの日に、イマーム・フサインが「カルバラーの戦い」で殺害されたため、シーア派の人々は「フサインの殉教」を哀悼して盛大な行事を催すようになったという…

トルコの世俗化

上記のユーチューバーの若いトルコ人女性について、私は「世俗的」と表現したけれど、スカーフを被っている母親と姉の様子を見ると、家族の保守的な傾向は明らかであり、彼女自身のイスラム信仰もトルコの標準からすれば、わりと熱心な部類に属しているかも…

「女性は悪魔か偽善者か?」

《2014年1月28日付け記事の再録》“漱石の罠”なんてつまらない話を書いて、漱石が主張した“無意識の偽善”を批判したけれど、あれが“則天去私”を求め、この世の平和を願った夏目漱石の思想なのかもしれない。 例えば、“アッサラーム”と唱え、やはりこの…

犠牲祭の生贄

トルコでは7月20日に始まった犠牲祭も今日(7月23日)で終わる。コロナ騒ぎの中、犠牲祭は盛り上がっていただろうか? 犠牲祭の期間中には、メッカへの大巡礼も行われるが、こちらは規模を縮小して実施されることが報じられていた。 トルコでも「生贄…

小説「イエシル・ゲジェ(緑の夜)」:自分の世界のごたごたで忙しい本来の民衆

「イエシル・ゲジェ(緑の夜):Yeşil Gece」は、トルコ共和国成立後の1928年に出版されたレシャット・ヌーリ・ギュンテキン(Reşat Nuri Güntekin:1889~1956)の小説で、オスマン帝国が崩壊して共和国革命に至る激動の時代を背景にしている。 小説の…

トルコでアルコールと豚肉の禁忌はどのくらい守られているのか?

イスラムの教義上の禁忌として良く知られているのは、アルコールと豚肉だろう。 ところが、トルコの場合、飲酒はかなり広範に行われていて、ラクという酒をトルコの伝統的な文化の一つに数える人たちもいる。禁忌を守っている敬虔な信者たちがそれを激しく非…

ゲズィ公園騒動の背景

2013年6月の騒動の舞台となったゲズィ公園の辺りには、オスマン帝国時代に軍の兵舎として設営された建物があったらしい。 この建物は、1940年にアンリ・プロストというフランス人建築家の都市計画にもとづいて取り壊され、その跡地がゲズィ公園にな…

「弱肉強食の世界」(ジェノサイド)

《2017年1月12日付け記事の再録》 昔、「カスター将軍の第7騎兵隊」をモチーフにしたアメリカ制作のテレビドラマが日本でも放映されていた。1960年生まれの私が、小学校3~4年生の頃に観ていた記憶があるから、おそらく60年代の後半だったの…

飲酒と同性愛

《2013年6月23日付け記事を修正して再録》 2009年、アルトヴィン県で知り合ったメフメットさんの家族は、夕食に夫婦揃って子供たちの前で酒を飲んでいた。それどころか、共産主義者を自称する高校生の娘もビールを口にしていた。 このため、私は…

トルコの同性愛者(ビュレント・エルソイ氏)

《2016年6月21日付け記事の再録》 エルドアン大統領夫妻と並んでイフタル(断食明けの夕食)の席に座っていたビュレント・エルソイ氏は、1952年の生まれで、現在64歳(2016年当時)。エルドアン大統領と握手している写真は、服装が異なるか…

「主題が祖国であれば残りは瑣末な事柄である!」(アタテュルク)

アタテュルクの言葉に「Söz konusu vatansa gerisi teferruattır.(主題が祖国であれば残りは瑣末な事柄である)」という有名な一節がある。 アタテュルクは祖国を守るため、ラディカルな西欧主義者やイスラム主義者とも手を組んだらしい。カラル紙のイブラ…

「どうぞ貴方が説明して下さい」

《2008年6月13日付け記事を修正して再録》 いつだったか(2006~8年頃)、敬虔なムスリムが多く集まるイスタンブール・ファティフ区のチャルシャンバという街へ出掛けた時のことである。 茶を飲みに入ったカフェで、3人の敬虔なムスリムに囲ま…

「中国のホスピタリティ」

《2007年1月5日付け記事を修正して再録》 1990年、東京の大学書林でトルコ語の学習を始めた頃、私は築地の魚河岸でトラックによる配送のアルバイトをしていた。早朝、2tトラックで魚河岸に乗りつけ、場内の卸商から荷車によって運ばれてくる鮮魚…

宗教に対する偏見/イスラムへの誤解

2014年の8月、イスタンブールで在留日本人の方に「クリミア・メモリアル教会」を案内していただいた。 この方は業務でトルコに出向中のエンジニアで、熱心なプロテスタントのクリスチャンだったが、「トルコにいると、クリスチャンに対する偏見が感じら…

「イスラムの土葬」

《2017年6月22日付け記事の再録》 2016年の10月だったか、「韓国で、火葬の割合が80%に達した」というニュースを読んだ。1988年、私が韓国に滞在していた頃は、土葬が殆どであり、火葬には強い抵抗を示す人たちが多かったので、何とも言…

アラビア語の賛美歌/イスラムの聖歌

Mersin Rum Ortodoks Kilisesi Korosu - İfrahi Ya Bayta Aniya (Sevin Ey Beytanya) メルシン(トルコの地中海沿岸)の東方正教会の教会で、聖歌隊が歌う賛美歌。ギリシャ語ではなく、アラビア語で歌われている。 2010年の3月、メルシンを訪れた際、こ…

科学的な信仰?

「幸福の科学」が如何なる教義を説いているのか知らないけれど、まずは信仰に「科学」という言葉を用いているところが奇妙に感じられてしまう。 トルコのアドゥナン・オクタル師もイスラム教を科学的に説明しようとしていた。それが何とも胡散臭かったのであ…

「幸福の科学」

《2012年11月27日付け記事の再録》 イスタンブールの“ブック・フェア”。今年(2012年)は、最終日の25日に出かけたところ、多くの来場者で立錐の余地もないような大盛況だった。人ごみの中を歩いていると、東洋人が二人、パンフレットを掲げて…

トルコは制御不能か?

米国の中東専門家で元CIA局員だったグラハム・フラー氏が自身のサイトに掲載した「トルコは制御不能か?」という論説が、トルコでは話題になっている。 表題はトルコに対して否定的な印象を与えるものの、内容は決して否定的なものではない。トルコをイス…

エルドアン大統領は恐妻家?/イスラム女性の社会進出

《2014年1月29日付け記事の再録》 イスラムでは、4人の妻を娶ることが許されていて、女性蔑視が甚だしいと言われているけれど、論語に出て来る「匹夫匹婦」が賤しい庶民の意になるのは、貴族であれば一夫多妻が当然だったかららしい。日本の歴史を振…

「質実剛健の気風」

《2016年8月17日付け記事を省略して再録》 昨年(2015年)の末頃、“YouTube”により、ドイツの農村で「豚の屠殺・解体」を取材した日本のドキュメンタリー番組を観た。遠い昔、冬の寒さが厳しいその村では、秋の間にドングリなどを食べさせて太ら…

「ジエリスタンの日本人テロリスト?」

《2015年12月13日付け記事の再録》 イスタンブールのアクサライ界隈には、ケバブの類をメインにした庶民的な店が軒を並べている。レバー(肝臓)串焼きの「ジエリスタン」はその中でもひと際目立っていた。ジエルがレバー(肝臓)の意で、ジエリスタ…

アスリートを支える敬虔な信仰

1~2ヶ月ぐらい前、イチロー選手がメジャーリーグで年間最多安打の記録を打ち立てた活躍を回想するBS番組を観ていたら、イチロー選手の前の打席に何処か見覚えのある若い選手が入っていた。 まだ少年のような雰囲気の若い選手に『何処で見たんだろう?』…

トルコ語の演説の名調子

一昨日、10月30日に亡くなったメスット・ユルマズ氏、まだ72歳だった。ユルマズ氏は、1991年の6月、43歳の若さで首相に就任している。 私は1991年の4月からトルコで暮らし始め、8月頃になって、ようやく政治に関するニュースも少し聴きと…

「何故、宗教を信じるのだろう?」

《2019年12月9日付け記事を再録》 パキスタンの物理学者パルヴェーズ・フッドボーイ氏は、2001年に著した「ムスリムと西洋 - 9 月 11 日の後」(学習院大学教授田崎晴明氏訳)という論説の中で、「イスラム教は- キリスト教、ユダヤ教、ヒンド…

「イスラムの問題/優越と劣等の葛藤」

《2019年12月7日付け記事を加筆して再録》 2015年の12月に“Haberturk”で放送された番組でメルヴェ・カヴァックチュ氏(女性)は、アメリカのイスラムフォビアを変動局面的な問題であるとして、かなり楽観的に見ていたものの、ヨーロッパのイス…

トルコの社会の「分断と対立」

私はトルコで、まず1991年~94年まで3年間暮らし、それから4年間のブランクを経て1998年~2017年まで過ごした。 私が初めてトルコを訪れてから、既に30年が過ぎようとしている。この30年の間で最も大きな変化は、やはり産業化、そして都…

何でも折衷させるのが巧いトルコの人たち

Ma Lana Mawlan SiwAllah - ASFA Temiz Kalpler Korosu (TRT) このYouTubeの動画は、2018年の「ラマダン祭」にイスタンブールのエユップ・スルタン・ジャーミー(モスク)前に設けられたイベント会場で、児童コーラスグループがアラビア語の宗教歌を歌っ…

トルコ語の時代?

2014年に亡くなったクルド人の友人は、まだ元気だった頃に、イランを旅行していた。2010年か2011年だったと思う。 友人は西北部のタブリーズで、非常な歓迎を受けたそうだ。タブリーズの辺りは南アゼルバイジャンとも言われ、住民の殆どがアゼル…