メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

トルコは制御不能か?

米国の中東専門家で元CIA局員だったグラハム・フラー氏が自身のサイトに掲載した「トルコは制御不能か?」という論説が、トルコでは話題になっている。

表題はトルコに対して否定的な印象を与えるものの、内容は決して否定的なものではない。トルコをイスラム教諸国のリーダー的な存在として認め、トルコの主張を理解する必要があるとしている。「制御不能」というのは、以前の「西欧に忠実なトルコ」をもう期待してはならないという意味らしい。

しかし、トルコでグラハム・フラー氏はギュレン教団の策謀に関わって来た人物と言われている。それどころか、2016年7月15日の「クーデター事件」では、当日、イスタンブールに滞在していた疑いもあり、事件へ関与したのではないかとして、イスタンブール検察から逮捕状が出されている人物なのである。

そのフラー氏が、何故、トルコを肯定的に認めるかのような論説を書いたのか、驚きと疑念をもって受けとめられているようだ。

論説の中でギュレン教団には全く言及がない。これは「既に教団が用済みになった」ということなのだろうか? この先、どういった続報があるのか気になるところである。

一方、米国がイスラム諸国の盟主に仕立て上げようとしていたサウジアラビアに対して、フラー氏は非常に辛辣な見方を示している。

イスラムの聖地であるメッカとメディーナを有し、貧しいイスラム諸国へ不寛容なワッハーブ派の教義を広める、石油の財力に依存した地政学的なジョーク」とまで言い放っているけれど、その冗談みたいな国を支援してきたのは米国に他ならないはずだ。

他にも、「サウジアラビアは歴史的な深みに乏しい」とか「重要な地方文化も、深い知的な伝統も、学問あるいはテクノロジーや発見もない」と言いたい放題である。

フラー氏によれば、エジプトも「強い独裁のもとに置かれた貧しくてビジョンもない国」であるそうだが、エジプトをその状態にしたのは、いったい何処の誰だろう?

まったく、これを読んだら、米国とはつくづく恐ろしい国だと思わされてしまった。

grahamefuller.com