メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

CHP党首の行進

 第一野党CHPのクルチダルオウル党首らが、CHPの議員でもあるジャーナリスト“エニス・ベルベルオウル氏”の懲役刑判決等々に抗議して、「公正」のプラカードを掲げながら、アンカラからイスタンブールまで徒歩の行進を続けているニュースは、日本のメディアでも取り上げられているようだ。
これに対するトルコの友人たちの反応が聞けないのは残念だけれど、欧米や日本のメディアに大きく取り上げられたほど、トルコの国内でも反響を呼んでいるのだろうか?
少なくとも、政権与党AKPの支持者たちは、大概、白けた感じで行進のニュースを見ているような気がする。トルコ民族主義的なMHPの支持者らの反応も同様であるかもしれない。
しかし、行進の意義をある面肯定的に見ているAKP寄りの識者もいる。
例えば、ニハル・ベンギス・カラジャ氏は、非常事態宣言の継続によって議会活動が制限されている現状、デモ行進という抗議の形態を一方的に批判することはできないと理解を示しながら、CHPが以前のように、イスラム化云々ではなく、「公正」を掲げてAKPに抗議している点を評価していた。
また、エニス・ベルベルオウル氏が、「MIT(国家情報局)輸送トラック事件」で犯した過ちは、せいぜい「軽率」と表現できる程度のものであり、判決の公正さには疑問があると認めていた。
一方、多くの識者が、「MIT(国家情報局)輸送トラック事件」の重大性を軽んじてはならないと指摘している。
「MIT(国家情報局)輸送トラック事件」は、2014年の1月、シリアへ物資を運んでいたMIT(国家情報局)の輸送トラックが、憲兵隊によって止められ捜索を受けた事件で、エニス・ベルベルオウル氏は、これを報道したことにより、国家機密漏洩罪に問われてしまった。
MIT(国家情報局)も憲兵隊も、トルコ共和国の根幹と言えるトルコ軍に関連する最も重要な機関であるため、その間に亀裂が生じたすれば、それは国家の根幹を揺るがす事態に成りかねなかったという。
これまでに明らかにされたところによると、事件はフェトフッラー・ギュレン教団のメンバーである検察官や憲兵隊員が仕組んだ陰謀であり、「7月15日クーデター」以来、ギュレン教団の恐るべき実態は、もはや疑う余地もないと論じられている。
だからと言って、事件を報道したジャーナリストまで逮捕してしまうのはどうかと思うが、ギュレン教団は、メディアの力を充分に利用しながら、策謀を重ねて来たと言われているから、なんとも微妙な部分はあるかもしれない。

次もAKP寄り識者の見解ではあるけれど、CHPのクルチダルオウル党首が、ギュレン教団やPKKの一掃という国家の最重要課題に取り組もうとしないまま、「行進」を続けようとした場合、かつては「後ろ盾」と言って良かったトルコ軍からも、決定的に見放されてしまうだろうと述べていた。
いずれにせよ、「行進」がトルコ国内にもたらした反響は、欧米や日本のメディアに大きく取り上げられたほどではないらしい。

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