イスタンブールの街角で、運転手がサンドイッチを食べながらトラックを走らせているのを見て驚いたのは2014年のことだった。
そうやって、トルコの人たちがガツガツ働くようになったのは、いつ頃からなのだろう?
1999年~2002年、私がアダパザル県クズルック村の邦人企業の工場で働いていた当時は、製造現場の作業員が深夜まで残業していても、エンジニアの多くは定時になるとさっさと帰宅していた。
ところが、「第5世代戦闘機」の開発に携わったエンジニアらは、度々現場に泊まり込んで研究を続けたという。
このプロジェクトが本格化したのは、2015年以降であるそうだから、やはりその頃からトルコの社会が一層活動的になってきたのかもしれない。
第5世代戦闘機の開発では、チーフエンジニアのエムレ・ヤバン氏がまだ40歳ぐらいなので、30代~40代の若いエンジニアが中心になっているのではないかと思う。
この若い世代は、前世代と何が異なっているのだろう?
良く解らないが、イデオロギー的な拘りが薄れてきたのも、その一つであるような気がする。
クズルック村の工場でも、当時の20代の若いエンジニアに、他人の宗教傾向をとやかく言う人は余りいないように感じられた。
その前の世代、私と同年配の人たちは、少なからず政教分離主義とイスラム主義の論争に明け暮れ、それを職場にまで持ち込むこともあった。
そもそも、当時、トルコの主要な企業では、イスラムの信仰に篤いエンジニアらが出世するチャンスは余りなかったらしい。
そのため、彼らには外資系の企業を選ぶ傾向が見られたそうだ。外資系の企業は、エンジニアとしての能力を重視してくれるからである。
トルコは、おそらく上述のような若い世代の台頭もあって、この10年ぐらいで、「政教分離主義」に「イスラム主義」といったイデオロギーの対立から解放されてきたのではないかと思う。
若い人たちはそのエネルギーを無用な論争に費やすことなく存分に発揮できるようになった。
いよいよトルコはエネルギー全開と言って良いかもしれない。