メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

非常事態宣言

(7月21日:12時40分)

昨日、エルドアン大統領は「非常事態宣言」を明らかにした。といっても国会の承認を得なければならないため、「宣言を推奨する」といった曖昧な表現だったが、国会の承認が得られるのは確実と言われている。

既に、ギュレン教団との関連を疑われる人たちが、軍、警察、司法、教育等々の機構から、凄い勢いで排除され始めており、「非常事態宣言」は事実上進行中であるという識者も少なくない。

しかし、この「非常事態宣言」に反対を表明している国会内の政党は、クルド系のHDPぐらいである。CHPは未だ態度を保留しているようだが、必ずしも反対の意向も示していない。

実際のところ、トルコがこれほど挙国一致的な雰囲気になったのを、私は初めて見たような気がする。クーデターの企てに対し、CHPを始めとする野党も一斉に、これを非難して、民主的に選ばれた政権の支持を表明していた。

CHPのクルチダルオウル党首によれば、エルドアン大統領は自らクルチダルオウル党首に電話で感謝の意を表したそうである。エルドアン氏とクルチダルオウル氏の間に、これほど親密な会話が交わされたのも初めてじゃないだろうか?

また、クーデターへの非難と「民主的に選ばれた政権の支持」までは、クルド系のHDPも同じ姿勢を見せていた。

こういったクルドの人たちの動向については、7月19日付けポスタ紙のコラムで、オラル・チャルシュラル氏が興味深い分析を試みている。

昨年来、南東部のクルド地域で、激しいPKK掃討戦を指揮していた将官の多くが、クーデターの企てに加わっていたというのである。そのため、南東部でも、クルド人の民衆がクーデターを阻止すべく激しく抵抗していたらしい。

チャルシュラル氏は、ギュレン教団が「クルド和平プロセス」に当初から反対していた点も指摘している。当時、教団系のザマン紙は、和平プロセスを「裏切りのプロセス」とまで詰りつけ、非難していたそうだ。

トルコは昨年から、現在も非常事態宣言中のフランスと同じくらい「非常な事態」の中にいた。このクーデター事件に至っては、既に国家存亡の危機と言っても過言ではない。非常事態宣言は、避けられない処置じゃないかと思う。


*写真:昨日(7月20日)のイスタンブールの様子。事件以来続いていた公共交通機関の無料は昨日までと聞いていたので、慌てて市内を回って来たが、無料期間は22日まで延期されたそうである。

  7月20日のイスタンブール
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