メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

4年前の今頃・・・

 思えば、4年前のちょうど今頃、トルコもトルコに住んでいる私も、色々甘い夢を見ていたような気がする。
イスタンブールは、2020年オリンピックの有力な候補地だった。IMF債務の完済を目前にして、経済は好調であり、AKP政権はクルド問題の解決にも、それ以前とは比べ物にならないほど大きな自信を見せる。
当時のエルドアン首相は、「クルディスタン州」という刺激的な言葉まで使って、州制度の可能性を提議しながら、これに強く反対するトルコ民族主義のMHPを厳しく批判していた。
ところが、現在のAKP政権は、そのMHPと連立を組んだかのように協力し合って、憲法改正の実現を目指しているのである。
MHPは、特に「7月15日クーデター事件」以来、存在感を増してきた。一部の識者によれば、事件後、軍部や司法からギュレン教団系が大量に排除された空白をMHP系が埋めつつあるのではないかという。
一時期、ギュレン教団系の排除を強く主張して、AKP政権への支持を表明しながら、自分たちに近い元軍人を復員させようとしていたドウ・ペリンチェク氏らが、今は反AKPの姿勢を見せているのを見ると、どうやらこちらの思惑は外れてしまったらしい。
2002年、政権に就いた当時のAKPは、軍部、司法、官僚機構のいずれにも影響力が弱く、ギュレン教団系に頼らざるを得なかったと多くの識者が指摘している。
トルコでは、軍部と司法が国家のオーナーであり、民選の政権は“雇われ社長”のように思われて来た。そのため、国民主権民主化の実現に向けて、エルドアン大統領の強い指導力に期待する声が高かったのである。
しかし、その最後の仕上げである憲法改正を発議して、AKPと共に推し進めて来たのが、軍部とも繋がりが深いとされるMHPなのでは、実際には何が進んでいるのか疑問を感じてしまう。
MHPは、1960年の軍事クーデターの首謀者の1人だったアルパスラン・テュルケシュ元大佐によって設立された、トルコ民族主義イスラムを習合させたような保守政党である。軍部の左派がCHPならば、右派にはMHP支持者が多いとも言われていた。
陰謀論的に妄想すると、国家のオーナーが軍部の左派から右派に変わるだけかもしれない・・・。
もちろん、エルドアン大統領が民主化を諦めてしまったとは考えたくないが、バランスを無視して動いたら、如何にカリスマ的な人気があったとしても、政権から振り落とされるだけではないだろうか。
なにより、中東の情勢が落ち着くまでは、とにかく安定政権を維持させなければならない。そして、残念ながら、中東の情勢がどうなるかは、トルコの大統領ではなく、アメリカの大統領にかかっているような気がする。
MHPの設立には、当時のトルコで左派的な傾向が強まるのを懸念したアメリカの意向が働いていたという説もある。AKPとMHPの協力は、アメリカとの関係修復にもプラスの作用を果たすと期待できる・・・。
なんて随分つまらない妄想を書き連ねてしまったけれど、中東に平和が戻れば、トルコの経済も回復して、再び民主化に取り組めるのではないかと思う。それまでは、余り甘い夢を見ても無駄になるかもしれない。

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