メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

AKPとMHPの関係に亀裂?

トルコでは、“地方選挙”が来年の3月に実施されることになったけれど、今年6月の“大統領・国政選挙”でAKPと連合を組んだMHPは、この地方選挙でAKPと連合しないそうである。

エルドアン大統領もMHPのバフチェリ党首も、連合の解消は地方選挙に限られ、今後も両党の連帯は続けられると言明したものの、反対派は『いよいよAKPとMHPは破局を迎えるのか?』と色めき立っているらしい。

両党の齟齬は、MHPが提議した“恩赦”の案をAKPが受け入れなかったことに始まり、「生徒宣誓」の問題で大きな亀裂に至ってしまった。

「生徒宣誓」は、かつて学校で毎朝生徒らに宣誓させていたもので、『私はトルコ人であります。正しい人間です。・・・』といった内容だが、2002年にAKPが政権に就くと、まず2004年に、当時のチェリック教育相が外国人生徒への宣誓を廃止させた。

この時、チェリック教育相はザマン紙のインタビューに答えて、次のように語っていた。「トルコ人(国民)ではないドイツ人の生徒に毎朝、『私はトルコ人であります。正しい人間です』と宣誓させた場合、最初の項目が嘘なわけだから、当然次の項目も嘘になるだろう」。


その後、2013年には裁判所の判決により、「生徒宣誓」は全面的に廃止されるに至った。ところが、今になって「ダヌシュタイ(最高行政裁判所)」がこの判決を取り消すと発表したため、AKPとMHPを巻き込む大きな論争になってしまっている。

エルドアン大統領の忠実な側近と目されているベキル・ボズダー元法相が、この発表に抗議すると、トルコ民族主義を掲げるMHPのバフチェリ党首は、ボズダー元法相がエスニック的にはクルド人であることに言及しながら同氏を批判したため、論争は一気に燃え上がってしまったようである。

エルドアン大統領は、「私はトルコ人だが、偏狭なトルコ民族主義者ではない。・・・」とボズダー元法相を援護しているけれど、自身もかつてはグルジア系のルーツを明らかにして、『トルコの首相たる者が何ということを・・・』と反対派から厳しく批判されたことがある。

しかし、「ダヌシュタイ(最高行政裁判所)」は、何故、今になって「この判決を取り消す」と発表したのだろう?

宣誓が廃止された2013年、まだ司法ではギュレン教団系がかなり幅を利かせていたはずである。また、外国人生徒への宣誓を止めさせたチェリック元教育相も、今やギュレン教団に近い人物として糾弾の対象になっている。

2013年12月の所謂“司法クーデター”以来、司法からギュレン教団系の排除が始まり、2016年7月のクーデター未遂事件以降は急に摘発が進んだため、その空白をMHP系が埋めているのではないかと言われていたけれど、もしもそうであれば、今後も似たような問題が起きてしまうかもしれない。

エルドアン大統領とAKPは、またしても司法との関係に苦慮しなければならなくなるのだろうか?


2016年12月1日(木)

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