メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

非常事態宣言下のトルコ

(7月21日:17時45分)
よく理解できていなかったけれど、非常事態宣言は既に今日(7月21日)の未明2時から有効となっていて、今日の国会で承認されるのは「その継続」なのだそうである。
期間は3ヶ月と発表された。しかし、ボズダー法相は、1ヶ月~1ヶ月半の間に終わるよう全力を尽くすと語っている。つまり、それまでに、ギュレン教団の勢力を完全に一掃してしまいたいらしい。
一方、ヒュリエト紙のムラット・イエトゥキン氏は3ヶ月でも難しいと述べているが、仮に、アメリカがギュレン師の送還に応じれば、教団の中から離反者が現れて、あっという間に解決されてしまうかもしれない。
ギュレン教団がここまで持ち堪え、挙句の果てに、クーデターを企てたのは、信奉者たちが「アメリカの後ろ盾」を信じて来たからではないかと言われている。「後ろ盾」がないと解れば、信心も揺らぐはずである。
この教団が、如何に危険で狂気に満ちているのか、今回の事件で、誰もが驚きと共に思い知らされたに違いない。私は頭が混乱して一応納得するのに2日掛かった。
教団はトルコだけでなく、日本やアメリカにも“浸潤”を図り、イスラムの布教活動を進めている。アメリカ政府は、これをそのまま放置するつもりだろうか?
エルドアン大統領もユルドゥルム首相も、アメリカを「友好国・友人」と言いながら、送還に応じるよう呼びかけている。もちろんアメリカを恐れ、関係の悪化は防ぎたいところじゃないかと思う。
しかし、おそらくトルコとアメリカの関係を悪化させたいロシアからは、「シリアに駐屯しているロシア軍がクーデターの動きを察知してエルドアン大統領に一報した」などと恩に着せるような報道も伝えられている。
クーデターの企てに加担して逮捕された空軍パイロットの中には、どうやらロシア機撃墜のパイロットも含まれているらしい。これでは話が一層ややこしくなってしまいそうである。
トルコの人たちは、大国との付き合いを、「熊との同衾」に喩えたりする。この2頭の熊は、本当に恐ろしい。
ところで、「エルドアン大統領への一報」だけれど、先日、イスマイル・ハック・ペキン退役陸軍中将は、まるで第一軍司令官の迅速な行動がエルドアン大統領を救ったように語っていた。
しかし、エルドアン大統領自身は、ロシア軍でも第一軍司令官でもなく、親戚からクーデターの発生を知らされたと明らかにしている。
政権側は、これを機に、軍と国防省の関係を改めるなど、文民統制を進めたいところだが、イスマイル・ハック・ペキン退役陸軍中将は、ギュレン教団系を排除して生じた空白に、かつてのクーデター疑惑で軍を放逐された将校を戻せば良いと提案したり、なんだか穏やかに政権側を牽制するかのようだった。
トルコは、大国間の綱引きに巻き込まれているばかりでなく、国内にも様々な綱引きがあって、なかなか一筋縄ではいきそうもない。
それから、どうでも良い話だけれど、エルドアン大統領が間一髪で危機を逃れたという保養地マルマリスのホテル。ニュース番組に映された、銃弾の跡が残る部屋の様子が余りにもみすぼらしいので、ちょっと調べてみたら、以下の“アモス・ホテル”という三ツ星の本当にみみっちいホテルである。
クーデターの一派は、当初、マルマリスの政府保養館に向かい、その後も宿泊先ホテルを特定するのに戸惑って襲撃に失敗したというくらいだから、ホテルの選択には、警護上の重大な理由があったに違いない。
とはいえ、「強大なトルコ共和国」の大統領が、あんな安っぽいホテルに泊まっていたなんて・・・。前東京都知事なら、絶対に泊まらなかったと思う。