メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

エルドアン大統領の任期は?

与党AKPが惨敗した地方選挙で、まだ選挙戦が競われていた頃、地方遊説に飛び回っていたエルドアン大統領が4年後の勇退を示唆して話題になっていた。

エルドアン大統領は、「法律上、これが私に与えられた最後の任期になる。選挙戦もこれが最後である。そのため、後を継ぐ友人たちへ禍根を残さぬよう頑張っている」と発言したのである。

この発言に、連合を組むMHP(民族主義者行動党)のデヴレット・バフチェリ党首が直ぐさま反応を示し、これまた話題になっている。

バフチェリ氏は、党内集会における演説で、エルドアン大統領に対して「離れることはできない! 国民を置き去りにして行くことはできない!」と任期の延長を呼びかけたのだが、その口調は厳しく、要請というより命令であるかのように思えた。

エルドアン派の識者によれば、現在、国を統治しているのは、エルドアン氏ではなくバフチェリ氏なのだから、命令口調になるのも当然のことらしい。

かつての支持者の中からも、「エルドアン大統領は、バフチェリ氏とペリンチェク氏の言いなりになっている」という批判が聞かれたくらいで、バフチェリ氏らが相当な影響力を持っているのは確かなようだけれど、それは両氏の背後に控えている軍部の影響力であるかもしれない。

バフチェリ氏は軍部の右派、祖国党(2015年までは労働者党)党首のドウ・ペリンチェク氏は軍部左派のイデオローグであるかのように長い間言われて来た。

「軍部の左派」というと何だか奇妙な感じもするが、トルコ共和国は「革命」を掲げて樹立されたので、長い間、左派が国家体制の側であると見られていた。

バフチェリ氏のMHPは、民族主義と共にイスラム色を強く打ちだしていることから、保守・右派に数えられるが、エルドアン大統領のAKPは、当初、さらに濃厚なイスラムであると思われため、保守反動・反体制と見做されかねなかった。

しかし、未だに「革命」を標榜しているペリンチェク氏も、この15年ぐらいの間にイスラムの価値を尊重して認めるようになったので、右派・左派という区分はそれほど明確ではなくなってきているかもしれない。

トルコ軍は、米国が供与した兵器でさらに武装化されたテロ組織との激しい戦闘状態にあり、多くの兵士が戦死を遂げる事態となった。

これにより、軍部のイスラム的な傾向も強まったのではないかと思う。

昨年の大統領選挙前まで、バフチェリ氏と共にエルドアン大統領を強く支持していたペリンチェク氏は、バフチェリ氏との関係を問われるや、「トルコ語の古来の意味からすれば『yoldaş(同志)』と言えるが、レーニンスターリンに対して使った『同志』という意味ではない」と答えたそうだ。

これは、「革命の同志ではないが、祖国防衛のために共に戦う同志である」という意味なのだろうか?

ペリンチェク氏は、再選されたエルドアン大統領による「スウェーデンNATO加盟承認」やシムシェク財務相の復帰を辛辣に批判して、エルドアン氏とAKPに対する支持を撤回したものの、イスタンブール市長に再選されたイマムオール氏に対する「米国の手先」という激しい非難の矛先も収めようとはしていない。

そのため、4年後の大統領選挙でイマムオール氏やそれに類する人物の当選は何としても阻止しようとするはずだ。

「同志」のバフチェリ氏も同じ思いであるに違いない。それで、エルドアン大統領の任期延長を主張したりするのだろう。

しかし、エルドアン氏は、4年後、74歳になっている。

法律上もそうだが、体力的にも難しい。おそらく、エルドアン氏自身が示唆したように「勇退」となるのではないか?

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