メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

トルコの地方選挙~与党の敗北

トルコの地方選挙は与党AKPの惨敗に終わった。注目されていたイスタンブールで市長の座を取り戻せなかったばかりか、全国の得票率でもCHPを下回ってしまった。

投票率が非常に低かった(それでも78%!)ため、昨年の大統領選でエルドアン氏を支持した人たちが棄権したのではないかと論じられていて、これが敗北の大きな要因であると言われている。(もっとも、昨年の大統領選挙でも、イスタンブールアンカラではCHPのクルチダルオール候補が勝っていた)

選挙戦中に、現職イマムオール市長の不正疑惑が取り沙汰され、多少は影響を及ぼすかと思われたが、これは何の効き目もなかったらしい。多くの有権者が、突然暴露された映像記録と司法の早い動きに国策捜査的なものを見ていたかもしれない。

AKPは、軍や司法を中心とする国家体制に対抗して民主化を進めたかのように喧伝されて来たので、元来のAKP支持者もこれを不愉快に感じたとしても不思議ではなさそうである。

ジャーナリストのルシェン・チャクル氏は、選挙前、「AKPは、『dava (訴訟)partisi(政党)』だったが、もう何も訴えるものがない」と論じていた。つまり、「国家に対して訴えを起こす政党だったが、その特質を失っている」という意味で述べたのではないかと思う。確かに、今や国家の側で、訴訟を受ける立場に回ってしまったかのようだ。

しかし、元AKP閣僚のエルカン・ムムジュ氏が明らかにした「2007年、エルドアンは次期大統領になることでビュユックアヌト参謀長官と了解し合っていた」という話が事実であれば、エルドアン氏は、もともと国家体制と対立するような立場にいなかったのだろう。

私には、トルコが国家として、イスラムや民族の問題の解決を模索してきたように思われてならない。そのためにも、選挙で勝ち続けてくれるエルドアン氏は有難い存在だったのではないだろうか?

トルコは、今、軍がテロ組織PKKの壊滅に迫り、「発展の道」といった大きな国家プロジェクトを進めている。AKPの敗北は、こういったプロジェクトに支障をきたさないかと国家体制の中枢は嘆いているかもしれない。私も少なからず残念に感じている。

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