メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

トルコの大統領選挙/クルド人の動向

5月14日に実施されることが決定したトルコの大統領選挙、ようやく野党6党連合の候補者もCHP(共和人民党)のクルチダルオール党首に決まり、選挙戦は盛り上がってきたようである。

この大統領選挙では、いずれの候補も過半数の票を獲得できなかった場合、上位の2者による決選投票が行われる。

2018年の選挙ではエルドアン大統領が1回目の投票で辛うじて52%を得て選出された。過半数を僅かに上回っただけであり、今回、なんとか決選投票に持ち込めば、6党連合が勝つ可能性も高まるのではないかと言われている。

選挙は8人の候補者によって争われるそうだが、最多得票はおそらくエルドアン大統領になるだろう。そのため、「過半数の規定がなかったら楽に勝てる」とエルドアン大統領支持者の中からも、この選挙制度に対する不満は当初より見られた。

トルコでは、90年代、各党の要求がなかなかまとまらない連立政権による政局の混乱が続いたことから、より迅速な決定が下されるよう大統領府に権限を集中させると共に、選挙で過半数の規定を設けたのだという。

しかし、6党連合のクルチダルオール氏が勝った場合、その大統領府は90年代の連立政権とさほど変わらない状態になるかもしれず、「いったい何のための過半数規定なのだ?」という声も聞かれる。

エルドアン大統領支持派は、クルド武装組織PKKとの関連が取り沙汰されるクルド民族主義政党HDPが公然と6党連合への支持を明らかにしているため、「過半数規定がHDPにキャスティングボートを握らせてしまった」と難じている。

一方、「HÜDAPAR」という保守を標榜するクルド系の政党は、エルドアン大統領支持を表明したので、確かにクルド系国民の動向が選挙の行方を左右する可能性は高いかもしれない。

HÜDAPARもかつては過激なイスラム主義組織ヒズボラとの関連が指摘されており、HÜDAPARの支持表明はエルドアン大統領側にとって有難迷惑と論じる向きもある。

(このヒズボラレバノンで組織されたシーア派ヒズボラと異なり、スンニー派の組織である。トルコでは違いを明らかにするため「クルドヒズボラ」とも呼ばれていた。)

実際のところ、南東部のクルド地域には、イスラム的・保守的な傾向が顕著であり、クルド民族主義政党が登場する前は「保守イスラム系政党の票田」と見做されていたらしい。

現在も、ガジアンテプ、ウルファといった地域では、エルドアン大統領のAKPが強く、イスタンブールクルド系市民からもAKPは相当数の票を得ているため、「クルド人から最も多くの票を得ているのはHDPでもHÜDAPARでもなくAKP」という説もある。

イスタンブールに居住するクルド系国民は、200万~400万に及ぶのではないかと見られ、南東部のクルド地域で最も大きなディヤルバクル県の人口が170万に過ぎないことから「最大のクルド地域はイスタンブール」などと言われたりしているのだ。

さて、今回の選挙で彼らはどのような反応を見せるのだろう?

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