メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

トルコとイラクによる「発展の道プロジェクト」

今、トルコで話題になっている大きな国家プロジェクト、一つは「Zengezur Koridoru(ゼンゲズル回廊)」と言われるプロジェクトで、トルコとアゼルバイジャンを道路と鉄道で直結させようというものだが、アルメニアかイランのいずれかを通過しなければならないため、まだ先行きの見通しは立っていないらしい。

一方、トルコの南東部シュルナクから、北イラク~バクダッドを経由してペルシャ湾に至る「Kalkınma Yolu Projesi」は、イラク側とも合意し、いよいよ実現に向けて動き出すそうだ。

「Kalkınma Yolu Projesi」を直訳すれば、「発展の道プロジェクト」あるいは「開発の道プロジェクト」になるんだろうけれど、何か他に巧い言い方はないものかと思う。

プロジェクトは、道路と鉄道に合わせてパイプラインと通信回線も敷設し、トルコ側からさらに西欧へ至る構想であるという。何だか高校の歴史授業で学んだ「3B政策」を思い出してしまう。

ドイツ帝国の「3B政策」には、英国が猛烈に反発し、第一次世界大戦でドイツが破れると、その計画も消滅して実現されることはなかった。

今回のトルコのプロジェクトでは、米国による妨害が懸念されているらしい。

しかし、ほんの数年前ですら、懸念も何も「米国の承認しないプロジェクト」が同地域で計画されるなんて、とても考えられなかった。

最近は、イラクの首相が唐突に「米軍はイラクから出て行け」と発言したり、トルコがイラクの了解を得て、陸軍によるイラク領内への越境作戦を検討したり、ひと頃は考えも及ばなかったことが起きている。

越境作戦はイラク領内で米軍の支援を受けているテロ組織PKKを壊滅させるためだが、そもそも「PKK」や「IS」といったテロ組織を壊滅させない限り、「発展の道」の実現は難しいかもしれない。

米国に対するトルコとイラクの強気の姿勢には驚くべきものが感じられるものの、かつては米国の忠実な従属国と見られていたサウジアラビアやエジプトも米国から距離を置き始めているようである。

先達ては、エルドアン大統領が12年ぶりにエジプトを訪問したことが話題になっていたけれど、エジプトはシーシー大統領が夫人と共に空港まで出向いてエルドアン大統領夫妻を出迎えるなど、絶大な歓待を見せていた。あれには、米国に対するメッセージも含まれていたのではないだろうか?

サウジアラビアも、何だかあの「カショギ氏暗殺事件」以来、米国への強気な姿勢を強めて来たように思われてならない。

カショギ氏は米国を活動の本拠地にしていたそうだから、米国のエージェント的な要素もあったと仮定してみれば、暗殺に至る経緯とその後の強気な姿勢との関連が理解できるような気もする。

いずれにせよ、中東における米国の存在感が著しく低下して、これまでの常識が通用しなくなっているのは確かじゃないかと思う。