メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

トルコリラの暴落と早期選挙

トルコリラの急激な下落が止まらない。生活物資の値上がりも続いているようだ。

このため、元来エルドアン政権の支持層だった保守的な庶民の中からも政権を批判する声が上がってきた。2017年4月まで私が暮らしていたイエニドアンでも、SNSに政権批判を書き込む友人たちがいる。

しかし、かつてエルドアンを激しく嫌っていた左派の友人は、「我が国の主権を守るための闘い」という政権側の主張に理解を見せていた。

こういった意見の相違には、各々が経済的な余裕をどのくらい維持しているかという条件も関わっているだろう。

もっとも、早期選挙が行われる可能性は非常に低く、2023年まで選挙は予定されていないので、当面、大きな動きはなさそうである。

ところで、早期選挙に関しては、政権を支えるMHPのバフチェリ党首もこれを強く否定したことが話題になっていたけれど、エルドアン氏のAKPを政権に押し上げたのは、2002年に実施された早期選挙だった。

当時、連立政権で首相を務めていたエジェビット氏が体調を崩して入院したため、早期選挙が取り沙汰されたものの、それを決定的なものにしたのは、連立政権の副首相、MHPのバフチェリ党首も早期選挙を要求したからである。

2002年、バフチェリ氏が早期選挙を否定し、政権の維持を強く主張していたら、果たしてどうなっていただろう? 今回と前回でバフチェリ氏の判断の相違は何に依拠していたのか?

いずれにせよ、その2002年の選挙では、複数の政党が規定の10%以上の得票率に至らず、議席を与えられなかったため、エルドアン氏のAKPは僅か34%の得票率ながら、66%の議席を確保して単独政権に就いてしまったのである。バフチェリ氏のMHPも、9%の得票率に止まり、議席を得ることはできなかった。

もちろん、選挙が国政に民意を反映させるためのシステムであるのは疑いの余地もないけれど、何だか他の様々な要因も「選挙」に影響を与えてきたように思われてならない。