メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

大晦日の「年越し蕎麦」

いよいよ今年も大晦日を迎えてしまった。今年はネットで調べてから、加古川で「年越し蕎麦」を食べて来た。

ネットで評判になっているだけあって、こしのある一般的な美味しい蕎麦だった。

「一般的な」と断ったのは、89年~91年に東池袋で暮らしていた頃、近所の蕎麦屋さんで食べた「余り一般的ではない美味しさの蕎麦」を思い出していたからだ。

製粉会社を退職して蕎麦屋を始めたという店主の打つ蕎麦は二通りあって、つなぎを全く使わない100%蕎麦粉の蕎麦と、豆乳をつなぎにした蕎麦だった。

100%蕎麦粉の蕎麦は、こしが殆どなくて、一般的な蕎麦の美味しさとは異なるように感じられた。

店主の方によると、蕎麦粉にはタンパク質・グルテンが含まれていないので、当然、100%蕎麦粉の蕎麦には「こし」が出ないという。そのため、一般的にはグルテンを含む小麦粉等を「つなぎ」として使うのである。

また、蕎麦粉は小麦粉と違って加熱処理する必要がなく、100%蕎麦粉の蕎麦は「茹でる」というより「湯がく」程度で、さっと湯の中から引き上げられていた。「十割蕎麦を謳いながら、茹で時間を要しているのは、看板に偽りあり」なんだそうである。この店では、豆乳をつなぎにして「こし」を出した蕎麦も余り茹で時間を要していなかった。

私は、大概、100%蕎麦粉の「ざる蕎麦」を食べていたけれど、あれは蕎麦の香りを楽しむための蕎麦だったと思う。スルスルっと啜ってから、しばらく口の中でモグモグさせて、香りが鼻の方へぬけるのを楽しんだりしたのである。そのぐらいだから、普通の蕎麦だと思って食べた人は『なんじゃこりゃ?』と驚いたかもしれない。

ところで、「年越し蕎麦」の由来には、「蕎麦は切れやすいから旧年の厄災を断ち切る」という説もあれば、「細く長いことから延命・長寿を願う」という何だか相反するような説もあるという。

「切れやすく」で良いのなら、100%蕎麦粉の蕎麦は「年越し蕎麦」に打ってつけかもしれないが、「細く長く」では多少不都合であるような気もする。静かにスルスルと啜らずに、激しくズルズルとやったら途中で切れてしまったりしたからだ。

しかし近年は、どうやら「細く長く」の説が主流みたいだから、今日食べた「こしのある美味しい蕎麦」は、とても縁起の良い「年越し蕎麦」になっただろう。

私も来年からまだまだ先は長いつもりで頑張ってみよう! それでは皆様、良いお年を!