メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

何でも折衷させるのが巧いトルコの人たち


Ma Lana Mawlan SiwAllah - ASFA Temiz Kalpler Korosu (TRT)

このYouTubeの動画は、2018年の「ラマダン祭」にイスタンブールのエユップ・スルタン・ジャーミー(モスク)前に設けられたイベント会場で、児童コーラスグループがアラビア語の宗教歌を歌っている場面である。

まず、がさつな雰囲気の男性司会者が、「どんな宗教歌を歌うの?」と訊き、「アラビア語の」という回答を得た後、彼は突然アラビア語で何事か問い、答えられずにまごつく児童らを差し置き、「『アラビア語は解りませんが歌います! おじさん!』と言ってます」なんて勝手に会話を成立させると、「私のアラビア語も君たちのものとそれほど変わらない。君たちがアラビア語で何か答えていれば、私のアラビア語などそこで終わってしまったんだ」と冗談を言ってから、聴衆に児童コーラスグループを紹介している。

このやり取りも面白かったが、コーラスグループの出で立ちがまた興味深い。少女たちは頭にスカーフを被っているものの、少年はスーツに蝶ネクタイで、全体的に洋装の雰囲気である。「和洋折衷」ならぬ「回洋折衷」といったところだろうか?

そもそも、イスラムには本来「宗教歌」という伝統がなく、そこにはキリスト教の賛美歌の影響が見られるという説もある。どうやら、色んなものが折衷されているようだ。

ラマダン祭をイベントで盛り上げてしまうのも、そういった「折衷」の結果であるかもしれない。

イスタンブールは東西文明の十字路」という言い方もあるけれど、十字路で暮らして来たトルコの人たちは、日本人と同様、色んなものを折衷させてしまうことに長けているのではないかと思う。