メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

「弱肉強食の世界」(ジェノサイド)

《2017年1月12日付け記事の再録》

昔、「カスター将軍の第7騎兵隊」をモチーフにしたアメリカ制作のテレビドラマが日本でも放映されていた。1960年生まれの私が、小学校3~4年生の頃に観ていた記憶があるから、おそらく60年代の後半だったのではないかと思う。
19世紀の西部で、勇敢なカスター将軍が、非文明的なインディアンと壮絶な戦いを繰り返し、最後に英雄的な死を遂げるといったストーリーの西部劇である。
さすがに、ネイティブ・アメリカンを蔑視した内容に、その後は、アメリカ国内でも批判が高まり、カスター将軍が正義の英雄として描かれていたのは、いくらなんでも、当時までだったらしい。
しかし、小学生の私は、何の分別もないまま、カスター将軍の活躍に拍手喝采を送っていた。お陰で、私の弱い頭に刻み込まれたインディアンの恐ろしいイメージを払拭するのも、結構時間が掛かっている。
「文明的なキリスト教徒の白人を捕まえて、火あぶりにしてしまう恐ろしい野蛮人」という風な感じだが、これは今考えて見ると、なんだか「IS」のイメージそのものである。
こういったメディアを使ったプロパガンダによる「イメージ戦略」みたいなものを、欧米は手を変え品を変え繰り返してきたような気がする。

日本も、かつては欧米で悪辣なイメージを喧伝されて、大分苦労したようだ。技術力も経済力もないトルコは、今でもやられっ放しである。
「IS」が、イスラムのイメージになってしまっているのも、トルコの人たちにとっては、遣り切れないだろう。「ISなどイスラムではない」とトルコ人がいくら主張しても、欧米のメディアには全く通用しない。結局、自分たちを慰めるだけの言葉になってしまう。
とはいえ、例えば、「統一教会」をキリスト教宗派の中に数えている欧米人は、いったいどのくらいいるのか? 日本人の多くも、オウム真理教について問われたら、「あんなものは仏教じゃありません」と答えるに違いない。
やはり、自分たちの主張を通用させようと思ったら、それが如何に正しかったとしても、それなりの“力”を持っていなければ、「負け犬の遠吠え」と見做されるだけではないだろうか?
弱肉強食の西部で滅ぼされてしまったインディアンは、歳月を経て、やっと憐憫の情をもって語られるようになった。これが彼らにとって唯一の慰めであるかもしれない。