メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

イスラム

トルコにおけるアルメニア系・アゼルバイジャン系の人々

トルコでは、アルメニアとアゼルバイジャンの紛争に対して、アゼルバイジャンへの支持を叫ぶ右翼的な人たちがデモ行進したりしているらしい。中には、アルメニア教会の前でアゼルバイジャンの国旗を掲げて行進する連中まで現れたため、いくつか新聞のコラム…

シーア派の熱狂とキリスト教/静かなスンニー派の礼拝

今日は、イスラム暦によるムハレム月の10日目「アーシューラー」の日である。西暦680年のこの日に、イマーム・フサインが「カルバラーの戦い」で殺害されたため、シーア派の人々は「フサインの殉教」を哀悼して盛大な行事を催すようになったという。 私…

アヤソフィア・モスクへの反発

アヤソフィアが再びモスクとなり、24日には金曜礼拝も執り行われた。これに対して、内外からの相当大きな反発が予想されていたけれど、どうやらそれほどでもなかったようだ。「エルドアン政権は、反発が激しければ、これを政治的に利用しようと思っていた…

「人間は必ず死ぬ/犠牲祭」

《2016年9月12日付け記事の再録》 7月15日のクーデター事件後、多分、西欧の放送局によるインタビューだった。 エルドアン大統領は、「アタテュルク空港への着陸を強行した際、死の危険を考えなかったのか?」という問いに対して、「人間は必ず死…

ビュユック・アヤソフィア・ジャーミー(大アヤソフィア・モスク)

アヤソフィアが再びモスクとなることが決まった。名称は以前と同じように「ビュユック・アヤソフィア・ジャーミー(大アヤソフィア・モスク)」になるらしい。 キリスト教のイコン(モザイク画)は、開閉式カーテンで礼拝時に覆うことを検討しているそうだが…

米国が企てたトルコの分割

《2019年10月13日付け記事を修正して再録》 ソビエト崩壊後、戦略的な価値が半減したトルコに対して、米国はあからさまに分割を企図するようになったという。 2006年9月には、NATOのセミナーで米軍将校の講師が、トルコ人将校らに「分割さ…

アヤソフィア博物館が再びモスクに?

トルコでは、「アヤソフィア」がイスラム教のモスクとして再び「信仰の場」となるかどうかが話題になっているようだ。 アヤソフィアは元々、東ローマ帝国時代の537年にキリスト教の聖堂として建築されたが、1453年、この地を征服したオスマン帝国によ…

偽りても賢を学ばんを・・・/私はあるがままの自分を見せられるだろうか?

《2019年11月1日の記事の再録》 私の偏見かもしれないが、既存の権威に対する抵抗として生まれたキリスト教と違って、イスラム教は、元々為政者の側に立っているように見える。そのためか、権威に対する反抗は悉く戒められているという。 異教徒が支…

無信仰者の意見に対するムスリムの反応

《2016年7月28日の記事を修正短縮して再録》 私はイスラム教徒じゃないし、キリスト教徒でもない。家の宗派は一応浄土真宗だけれど、「南無阿弥陀仏を唱えれば成仏できる」なんて話も、もちろん信じていない。 神道にも、伝統的な習俗として、あるい…

「イスラムは頑張らない宗教」

《2015年2月3日の記事を修正して再録》 2000年頃だったか、イスタンブールで、ある程度日本語を解するトルコ人女性が、日本人観光客から「イスラム教はどういう宗教ですか?」と訊かれて、「頑張らない宗教です」と即答していた。私は今でもこれに…

リモート・イフタル(夕食会)?

コロナの話題ばかりで忘れていたが、昨日でラマダンも終わりバイラム(祝祭)が始まっているようだ。 しかし、トルコではラマダン期間中も外出禁止令が出されたりして、断食明けの夕食イフタルも本来のように親族や友人たちが集まって楽しむことができなかっ…

老人の説教-(感染症の流行っている地域に行ってはならない・・・)

《2014年10月18日付け記事の再録》 昨年(2013年)の2月頃だったか、ある出版社を訪ねて、そこの編集者と話していたら、彼がイスラムとキリスト教を次のように比較したので、非常に興味深く感じた。「キリスト教には、感嘆を呼び起こし、人を興…

トルコとロシアによる停戦合意/アイシェは休暇に出なかった?

トルコとロシアが停戦に合意して、シリアでの大きな戦闘はひとまず回避されたものの、これは一時的な停戦に過ぎないという見方がトルコでも強いようだ。しかし、YouTubeから視聴したトルコの時事番組でそう論じたトルコの政治学者は、「学術の分野では、否定…

イスラム化というより俗化?

ひと頃、トルコのイスラム化が騒がれていたけれど、あれはどうなったのか? この女優さんがバレンタインデーに楽しんだという「お幸せなメッカへの小巡礼」からイスラム化の問題を考えようとしたら訳が分からなくなってしまうかもしれない。 しかし、これは…

夫は『恋人たちの日(バレンタインデー)』に本当の愛をみせてくれた!?

《2017年2月16日に掲載した記事の再録》 一昨日(2017年2月)、「恋人たちの日」関連のネタを探していたら、以下のような2015年2月の記事が見つかった。ジェレン・ヒンディスタンという女優さんが、「恋人たちの日」に、夫とイスラムの聖地…

「孵化しかけ卵」で思い出したこと

先日、ベトナム料理の「孵化しかけ卵」を食べて、20年ほど前、トルコの農村で犠牲祭の儀式に立ち会った際の出来事を思い出した。その儀式では、牛と羊が捧げられたけれど、皮を剥ぎ内蔵を取り出す段階になって、屠られた雌羊に胎児が宿っていたことが明ら…

米国の庇護下におかれているギュレン師

フェトフッラー・ギュレン師の教団は、1970年代の中頃にイズミルで形作られ、90年代以降、急成長を遂げた。その活動には、当初より欧米西側諸国からの支援があったのではないかと言われているけれど、冷戦の時代は、ギュレン師の教団に限らず、そうい…

トルコの10年前と現在

この10年のトルコの変化を振り返って見ると、与党AKPと野党CHPの立ち位置が逆転してしまったかのようである。10年前、CHPは野党ではあるものの、アタテュルクの政党として共和国体制の守護者をもって任じており、EU加盟を目標に掲げながらク…

歴史に「たら・れば」は無いが・・・

歴史に「たら・れば」は無いと言うけれど、もしも、2004年のキプロス国民投票で南側も統合を承認していたら、どうなっていただろう? 現在、シリアからリビアに至る東地中海の問題の中で、キャスティングボートを握っているのではないかとも言われ、ある…

開明的なイスラムの先生たち

2004年の3月、南東部のビトゥリス県で、妻子ある従兄と不倫して妊娠した未婚の女性が、部族社会の掟に従った実の弟に撃ち殺されるという衝撃的な事件が報じられた。 しかし、この15年の間にも、産業化・都市化がさらに進んだトルコでは、部族社会の解…

オスマン帝国の西欧化 ~ 英国のボリス・ジョンソン首相

ジャズやロックのレーベルとして知られているアトランティック・レコーズの創業者アーメット・アーティガン氏は、オスマン帝国の有数なイスラム教指導者の家系であり、やはりアトランティック・レコーズのプロデューサーだったアリフ・マーディン氏に至って…

何故、人は宗教を必要とするのか?

何故、人が宗教を必要とするのかについて論じた書物を読んだ中で、今までもっとも納得させられたのは、この「漱石の『行人』」に出て来る『山を呼び寄せるモハメッドの話』」だった。 モハメッドは人々に「山を呼び寄せて見せる」と約束し、それを実行に移そ…

イスラムの社会性?/ギュレン教団の宣教活動

2017年の2月頃だったと思う。トルコの時事討論番組でイスラム神学者と思われる出演者が、「ISやギュレン教団が、何故、あれほど歪な信仰に囚われているのか? それは彼らに“祖国”という概念がないからだ」と語っていた。 左派らしい出演者は、呆れか…

何故、宗教を信じるのだろう?

パキスタンの物理学者パルヴェーズ・フッドボーイ氏は、2001年に著した「ムスリムと西洋 - 9 月 11 日の後」という論説の中で、「イスラム教は- キリスト教、ユダヤ教、ヒンドゥー教、あるいは他のすべての宗教と同様- 平和についての宗教ではない。 …

イスラムの問題/優越と劣等の葛藤

2015年の12月に“Haberturk”で放送された番組でメルヴェ・カヴァックチュ氏(女性)は、アメリカのイスラムフォビアを変動局面的な問題であるとして、かなり楽観的に見ていたものの、ヨーロッパのイスラムフォビアは、過去の植民地史の清算といった側面…

民族と国家:イスラム史の視角から

1991年に初めてトルコへ渡航する前、東京都内でトルコ語の講座に通ったことはあるものの、それ以外にトルコの歴史や宗教について特に学んだりしたわけではない。 そういった分野の知識は、その殆どが渡航後にトルコ語の新聞等を読みながら得た雑学で成り…

ユダヤとイスラム

ユダヤ人とイスラム教徒は、豚肉の禁忌など共通しているところが多い所為か、西欧の各都市では隣接する地区に住んでいる場合が少なくないそうだ。 血を禁忌とするのも共通しており、そのため、屠殺の際に頸動脈を切って充分な血抜きを行う。イスラム教徒はユ…

神戸モスク / 東京ジャーミー(モスク)

三ノ宮の「神戸モスク」には、私の他にも多くの見学者が訪れていた。イスラムに関心のある人が多少は増えているようだ。 東京の「東京ジャーミー(モスク)」は、トルコ共和国の宗務庁が管理しているので、イスラムばかりでなくトルコ文化の広報にも努めてい…

北イラク・クルド自治区と北シリア

昨日、ワシントンで開かれた反IS連合の外相会議に出席したチャヴシュオール外相は、トルコによるIS掃討戦の過程を説明すると共に、シリアのクルド武装勢力YPG/PKKがテロ組織であることを改めて強調したという。 10日ほど前には、北イラク・クル…

エルドアン大統領とトランプ大統領の会談/ トルコ語のラテン文字化

エルドアン大統領とトランプ大統領の会談は、特に成果もなかったけれど、とにかく米国との関係が維持されたことでトルコ側は満足しているようだ。 サバー紙のメフメット・バルラス氏は、トランプ政権も、来年の選挙を乗り切るまでは、思い切った手が打てない…