メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

ユダヤとイスラム

ユダヤ人とイスラム教徒は、豚肉の禁忌など共通しているところが多い所為か、西欧の各都市では隣接する地区に住んでいる場合が少なくないそうだ。

血を禁忌とするのも共通しており、そのため、屠殺の際に頸動脈を切って充分な血抜きを行う。イスラム教徒はユダヤ人の精肉店ならば安心して肉を求めることができるらしい。

イスタンブールユダヤ人には、15世紀のレコンキスタイベリア半島から追われて来たセファルディ系の子孫が多く、彼らは数世代前までスペイン語に近いラディノ語を維持していたという。おそらく、イスラム教徒らとも良好な関係を築いていたのではないかと思う。

イベリア半島キリスト教徒がレコンキスタユダヤ人を追い出したように、歴史上問題になっていたのは、キリスト教徒らとの関係だったはずである。

シェークスピアの「ベニスの商人」にもユダヤ人に対する差別感が現れているのではないだろうか?

悪徳なユダヤ人の高利貸しは、「期日までに返済できなければ、体から1ポンドの肉を切り取らせてもらう」という契約を実行に移そうとするが、「切り取っても良い。しかし、契約に書かれていない“血”は一滴も流してはならぬ」という名裁きによって野望を挫かれ、挙句の果てには、キリスト教への改宗を余儀なくされてしまうのである。

この話には、血を禁忌とするユダヤ教への皮肉も込められているような気がする。