メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

神戸モスク / 東京ジャーミー(モスク)

三ノ宮の「神戸モスク」には、私の他にも多くの見学者が訪れていた。イスラムに関心のある人が多少は増えているようだ。

東京の「東京ジャーミー(モスク)」は、トルコ共和国の宗務庁が管理しているので、イスラムばかりでなくトルコ文化の広報にも努めているけれど、イスラムに関する情報も宗務庁から派遣されている見識の高いイマーム(導師)が監修しているのだから、非常に高度な内容が期待できるのではないかと思う。

東京以外の地域にもトルコの宗務庁によるモスクが建立されるように願っている。

2003年、私はトルコ人の友人と共に東京ジャーミーを訪れたことがあった。友人はイマームに折り入って頼みがあると話していた。

ジャーミーでイマームの部屋に通されると、友人は以下のような要望をイマームに伝えたのである。

トルコ人の友人が日本人の奥さんとの間に男の子を儲けた後に他界してしまい、男の子は日本でお母さんに育てられているものの、何らイスラム教徒としての教育が与えられていないばかりか、このままでは年頃になったのに割礼も施されないようだから、何とかしてもらいたい」

イマームは静かに友人の話を聞いた後で、まず、その男の子が今後も日本で生活して行くことを確認してから、次のように答えた。

「その子は日本人として育つことになるんですね。それを私たちが無理してムスリムにさせることが、その子の幸せになりますか? 良くお考えになって下さい。私たちは遠くからその子の成長を見守ってあげれば良いのではないでしょうか?」。

穏やかに友人の理解を求めるような口調だった。

私はその誠実で日本の常識に配慮した対応に感動したけれど、トルコで何人かのイスラム神学者にこの話を伝えて見解を求めると、いずれも「それが当たり前な対応です。そのイマームは職責を果たしています」といったように答えていた。