メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

アヤソフィア・モスクへの反発

アヤソフィアが再びモスクとなり、24日には金曜礼拝も執り行われた。これに対して、内外からの相当大きな反発が予想されていたけれど、どうやらそれほどでもなかったようだ。「エルドアン政権は、反発が激しければ、これを政治的に利用しようと思っていたのに拍子抜けしてしまったのではないか」と憶測する向きもある。

もちろん、モスク化を非難する声は大きく報道されていたものの、それは具体的な処置を伴わない単なる「hikaye(お話)」に過ぎなかったらしい。そもそも、独立国であるトルコが、アヤソフィアの利用方法について他国の干渉を受ける筋合いなどなかったはずである。

トルコの報道では、1934年、苦難の建国から僅か10年、未だ確固たる基盤を築いていなかったトルコで、アタテュルクが「アヤソフィア・モスクの博物館化」を認めたのは、海峡の通行制度に関わるモントルー条約の交渉を有利に進めるための譲歩だったという説も紹介されていた。以来86年、既に確固たる基盤を築き上げたトルコは、そういった譲歩を必要としなくなったということなのかもしれない。

一方、アヤソフィア・モスクの再興を喜ぶ内外のイスラム主義者たちの中から、これをさらなるイスラム化の契機にして、カリフ制度の再興等を望む声が出ているそうだけれど、こちらも単なる「hikaye(お話)」に過ぎないと思う。

まず、アヤソフィア・モスクの再興と異なり、トルコ国内の大多数の賛同を得られない。賛同するのは僅かに残ったイスラム主義者らだけだろう。

それから、サウジアラビアやエジプトなど、反トルコ的なイスラム諸国がトルコのカリフを認める訳がない。彼らは自分たちのカリフを擁立しようとするはずだ。

ヒュリエト紙のアフメット・ハーカン氏は「カリフ制度が出来たら、いったい何人がカリフになるのか?」と皮肉っていた。

昨日は、正教会のバルソロメオス総主教がエルドアン大統領へ、トラブゾン県のスメラ僧院の改修支援に対して電話で謝意を述べたと報じられている。トルコでは、何事も一方的には動かないようである。