上記の駄文に、「餃子の王将」では、いつもニラレバと餃子ばかり食べているような話を書いてしまったが、昨日はムーシューロウと餃子だった。ムーシューロウも美味い。
王将のメニューには「肉と卵のいりつけ」と記されているけれど、厨房へオーダーを通す際には「ムーシューロウ、イーガ(ひとつ)」と叫んでいたような気がする。やっぱり、あれは「ムーシューロウ」なのだ。
しかし、何故、「ムーシューロウ(木須肉)」「チンジャオロース(青椒肉絲)」「ホイコウロウ(回鍋肉)」「チャーハン(炒飯)」などは、中国語の発音に近い呼び方が定着したのだろう?
ニラレバや蟹玉、酢豚は日本語であるし、八宝菜は日本の音読み、餃子も中国語の発音には余り似ていないらしい。
「木須肉」を音読みで「モクスニク」と呼ぶのは何だか語呂が悪いし、「青椒肉絲」と「回鍋肉」に至っては、そもそも「絲」「鍋」という漢字の音読みが解らない。今調べたら、「シ」と「カ」であるそうだが、これでは日本の音読みで定着しなかったのは道理だろう。
「ニラレバ」「蟹玉」「酢豚」は短い日本語で巧く言い表されているから、この呼び方が定着したのかもしれない。「肉と卵のいりつけ」とか「肉とピーマンの細切り炒め」では、ちょっと長過ぎる。
「酢豚」は訓読みで日本語だから、中国の人たちに漢字で書いても理解されないらしい。「糖酢肉」と書いたら解ってもらえたことはある。
イスタンブールで鮨職人として働いていた中国人の盧さんを、私たち日本人は「ルーさん」とか「ルーベイ」と呼んで親しんでいたけれど、長い間、漢族の人だろうと思っていた。ところが、ある日、盧さんとトルコ語で雑談していて、彼がイスラム教徒の回族であると解り、皆が驚いた。
「えーっ、盧さんムスリムだったの!」と口々に言い、それから「中国の人なのに美味しい酢豚が食べられないなんて可哀そう!」なんて話になり、誰かが「糖酢肉」と書きながら、我々の驚きを伝えたところ、盧さんは「この料理は鶏肉でも良いですよ」と言い、どういう料理なのか解ってくれたのである。
しかし、「可哀そう」には全く堪えた様子もなく、「中華料理はとても豊かなので、豚肉が使えなくても困りません。他に美味しい料理がたくさんあります」と笑っていた。確かにそうかもしれない。北京や上海にも回族やウイグル族の人たちは多いので、「清真料理」というイスラム教徒のための料理を提供する店があるそうだ。