「イルマーレ」という米国の映画を、私は2008~9年頃にイスタンブールからイズミルへ向かう長距離バスの中で観た。
現在と過去が交差する筋立ての面白さに引き寄せられて暫く観ていると、劇中にポール・マッカートニーの歌声が流れて来たのである。
初めて聴く知らない曲だったが、ポール・マッカートニーの声であることは直ぐに解った。メロディーも直ぐ耳に馴染んだ。ポール・マッカートニーらしい美しさが感じられる曲だった。
この「This never happened before」という曲の作用もあって、映画の印象は私の脳裏に刻み込まれたのだろう。
その後、元になった韓国映画の「イルマーレ」を観て、こちらの方が遥かに名作だとは思ったけれど、ポール・マッカートニーの歌声と共に米国版「イルマーレ」の印象も色褪せることはなかった。
ところが、先日、米国版「イルマーレ」を再び視聴して驚いた。劇中、何度も聴いたと思っていたポール・マッカートニーの歌が流れたのは、中間の部分とエンディングの2回だけだったのである。
映画の方も、韓国版「イルマーレ」に比べたら、なんともお粗末な駄作であるように感じられた。
どうやら、米国版「イルマーレ」の良い印象は、ひたすらポール・マッカートニーの歌によって支えられていたらしい。
「This never happened before」は2003年の作品で、当時、ポール・マッカートニーは既に61歳になっていたはずだが、あの瑞々しさはいったい何なのだろう?
とはいえ、私も今61歳で、いまだに瑞々しいというか、馬鹿々々しい若さを保っているから、それほど驚く必要はないかもしれない。
ただ、私の馬鹿々々しい若さには何の創造力も備わっていないところが悲しくなる。