メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

「栄光への脱出」

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1960年の米国映画「栄光への脱出」。未だに本編を観ていないが、テーマ曲は20代の頃に聴いて以来、とても好きな映画音楽の一つになっている。

映画はイスラエルの建国に纏わる物語で、キプロス島に勾留されていたユダヤ人らがパレスチナに向けて脱出する過程を「英雄的な叙事詩」として描いたようである。

パレスチナへ向かう不法移民船は「エクソダス号」と名付けられたが、これは大挙脱出という意味で、旧約聖書の「出エジプト記」に由来しているらしい。

旧約聖書ユダヤの人たちにとっては、民族の成り立ちが描かれた「叙事詩」と言って良いのではないかと思うけれど、中には「エリコの大虐殺」といった凄惨な物語が含まれているという。

その物語は、紀元前1200年頃、イスラエルの民が神の命に従いパレスチナのエリコの住人たちに対して行ったとされる大虐殺の伝承に基づいているそうだ。

それから3200年を経た今、イスラエルは再び同じ悲劇を繰り返そうとしているのだろうか?

ガザの惨状は、それぞれに相反する主張もあったりして真実を見極めるのは難しいものの、イスラエルが圧倒的な軍事力でガザを攻撃し、大量の民間人が犠牲となっているのは間違いないようである。そのため、世界各国で「イスラエルの蛮行」を非難するデモが繰り広げられている。

しかし、旧約聖書が多くの人たちから「聖典」として読み継がれ、「栄光への脱出」が感動的な映画として語られているように、惨劇や戦闘は年月を経て美化されてしまう傾向があるのかもしれない。

後世、ガザの惨劇はどのように評価されるのだろう? 美化され映画となって人々を感動させる可能性はあるだろうか?

戦争はともかく、さすがに近代以降に起きた民間人の大量虐殺は、美化されていないと思う。米国も、まさか広島・長崎への原爆投下を美化することはないはずだ。

大量虐殺で問題とされるのは、その要因と経過、犠牲者の数であり、被害者と加害者の主張に食い違いが見られたりするけれど、虐殺の美化など絶対に認められない。

ガザでも犠牲者の数については、既に双方から異なる主張が出ている。

民間人の大量虐殺で、犠牲者の数が被害者と加害者の主張に差が無く、かなり明確になっているのは、広島・長崎の原爆投下と東京大空襲ぐらいであるかもしれない。

*「栄光への脱出」のテーマ曲「エクソダス」は以下のエディット・ピアフの歌唱で聴くと、尚一層素晴らしい。イスラエルの建国に纏わる数々の問題点を聞かされても、私の単純な頭は、この歌に痺れるほど感動している。だから、簡単に戦争が美化されてしまうのだろうか?

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