メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

続・イスタンブールで再選挙?

イスタンブールの再選挙等の問題について、良く記事を読んでいなかったため、私はなんだか勘違いしていた。エクレム・イマムオール氏は既に就任してイスタンブール知事としての活動を始めているものの、選管も不正云々に関する調査を続けており、結果によっては6月2日に再選挙という可能性が残されているらしい。

 調査結果は今週中にも明らかにされるようだが、再選挙という事態になれば、熱い鉄は冷えるどころかますます熱してしまいそうである。

 しかし、不正が立証されても、それによる得票数の変動が選挙結果を覆すものでなければ、選管は再選挙を命じないと言うし、エルドアン大統領も選管の決定に従うと明言しているので、イマムオール氏はそのまま職務を続けられるのではないかと思う。

 CHP支持者はもちろん、AKPを支持している(或いは“していた”)リベラルな識者たちもイマムオール氏の続投を望んでいる。

 また、このリベラルな識者たちの一部には、これを機会にエルドアン大統領がMHPのバフチェリ党首と距離を置くようになればと願っている気配が感じられたけれど、一昨日だったか、エルドアン大統領はMHPとの“共和連合”の継続を改めて力説していた。

そもそも議会の方は、MHPとの連合で過半数を確保している状況だから、MHPの協力が得られないと、ちょっとした法案を通すのも難しいだろう。

そして4月24日には、アルメニア問題に関しても、エルドアン大統領は、リベラルな識者の希望と異なり、1915年の痛ましい事件の真相究明を西欧各国の指導者らに強く訴えたメッセージを明らかにしている。

 とはいえ、既に“哀悼の意”は表明しているし、トルコ側も、オスマン帝国が1915年にアルメニア人を強制移住させた際、多くの死者が出た事実は認めているものの、所謂“アルメニア大虐殺”を主張する西欧各国とは、その死者の数に大きな隔たりがあるようだ。

 これは、日本が悩まされている所謂“南京大虐殺”と同じように、西欧各国やディアスポラアルメニア人らの主張に明らかな誇張があるように感じられてならない。

 日本でも“リベラルな識者”は、とにかく謝罪すれば和解が得られて平和になる未来を描きたがるけれど、現実の国際社会はそれほど生易しいものではなさそうである。

 トルコを取り巻く国際社会の現実も非常に厳しい。シリアの混乱は収まっていないし、ギュレン教団の策謀も、ギュレン師の送還が実現しなければ根絶やしにするのは難しい。「国の存亡」の問題、「分割の危機」は確かにあると思う。

 こういった問題に敏感な反米主義者のドウ・ペリンチェク氏も、国難を訴え、条件次第でエルドアン大統領に協力すると発言しているが、その条件は「オザル以来の間違った経済政策を止めれば・・・」というものらしい。つまり、開放的な市場経済から、80年代以前の国営企業を中心とする閉鎖的な経済に戻そうということなのだろうか?

 ペリンチェク氏の率いる祖国党はかつての労働者党で、ペリンチェク氏はもともと社会主義者なのである。

 ところで、エルドアン大統領がその薫陶を受けた「ミッリ・ギョルシュ(国民の思想)」の故エルバカン師も、故オザル大統領の経済開放政策に反対していた。断固反米でギュレン教団と敵対していたところもペリンチェク氏と共通している。異なるのは、社会主義イスラム主義かという点だけなのかもしれない。 

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