一昨日は、住吉川から蘆屋の辺り一帯を歩き、蘆屋川(阪急)から300mほどの所にある、トルコ人の旧友が営む料理店に寄った。「細雪」の家族の家は、そのもう少し先に位置していたことになっている。
旧友の料理店で昼を食べてから、また阪神の蘆屋まで歩いた。「細雪」では、貞之助が先ず自分の娘悦子を迎えに、洪水の迫る中、阪神蘆屋駅近くの小学校へ向かうのである。
「貞之助が小学校へ行って帰って来る迄の時間は、いつもなら三十分も懸らない所なのであるが、その日は一時間以上も懸ったことであろう。」と記されているけれど、確かに10分~15分ぐらいの道のりだったと思う。9歳の悦子が毎日通うには結構な距離であるかもしれない。
そのあとは、阪神電車で元町へ出た。南京街の食材店で「汾酒」を仕入れるためだ。
先日、西淀川で買って来た高粱酒を飲んで、『癖のあるチーズとかに良く合うかもしれない』と思って、汾酒が頭に浮かんだのである。
昨日、さっそくブルーチーズで試してみたところ、まさしくぴったりだった。というより、久しぶりに飲んだ汾酒に魅了されてしまった。
とはいえ、飲んだのはショットグラスに一杯だけで、それも週1~2回に留めるつもりだ。
考えてみると、汾酒は「久しぶり」どころか、38年ぶりだったような気もする。
38年前、信州松本で醸造所が経営していた「酒のスーパー」といった店で購入して飲み、「美味い」と思ったものの、東京に帰ってきてから飲んだ「茅台酒」がもっと美味くて、以来、中国の白酒を飲むなら、それは茅台酒になっていた。
ところが、トルコから帰国して、福岡にいた頃、茅台酒を探し求めてその値段にぶったまげてしまった。3~4万円である。
なんでも、中国で贈答品として茅台酒の人気が高まり、買い占めが横行して値段が吊り上げられてしまったらしい。
贈収賄で逮捕された共産党幹部の自宅で発見された数千本だか数万本が廃棄処分にされ一遍にぶちまけられたなんてニュースもあった。茅台酒は数滴でももの凄い芳香が漂う。そんな数をぶちまけたら、いったいどんな芳香が広がったのだろう?
そのため、最近は偽物の茅台酒が市場に出回っているそうだ。しかし、偽物と言っても、貴州の茅台で醸造されていなければ「茅台酒」と認められないので、中には品質はそれほど劣らない他地方産の「偽・茅台酒」もあるらしい。
それなら、その「偽・茅台酒」を「何々産」と明記して、適当な価格で流通させれば良いのではないか。
「ウイスキー」も全てがスコットランドやアイルランドで生産されているわけじゃない。日本で生産されたウイスキーの評価も高いという。
茅台酒も日本で作ったら、結構良いものが出来ると思う。
中国で美味いものは料理に限らない、酒も茶も皆美味い。何故、茅台酒や汾酒がウイスキーのように広まらなかったのか不思議なくらいだ。
ウイスキーがあれほど広まったのは、アングロサクソンが暴力で世界を侵略し制覇したのと無関係ではないかもしれない。ウイスキーには暴力と帝国主義の香りも漂っているのではないだろうか?
そういえば、昨日の汾酒は、平和と文明の香りに満ちていたような気がする。