メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

すべては霧の中?/エリア・カザンがカメオ出演したトルコの映画

1988年制作のトルコ映画「Sis(霧)」、日本では89年か90年に封切りされ、私はそれを新宿の映画館で観た。既にトルコ語を学び始めていたから、少しでも単語を聞き取ろうしたが、解ったのは「メルハバ」といった挨拶の言葉ぐらいだった。

緊張感のあるストーリー展開はもちろんのこと、ギリシャの作曲家ミキス・テオドラキスの音楽と共に浮かび上がるイスタンブールの光景(特にラストシーン)が実に素晴らしい傑作ではないかと思う。

米国の著名な映画監督エリア・カザンカメオ出演も話題になっていたが、エリア・カザンイスタンブールの生まれであり、幼い頃に米国へ渡ったものの、70年代以降、度々トルコを訪れていたそうだ。

上記のYouTube動画の「1:11:40」辺りから数秒ほどの間、エリア・カザンの姿を画面に見ることができる。

トルコ語による会話の場面はないと思っていたが、今確認してみたところ、二言三言トルコ語で話している。それがカザンの実声なのかどうかは解らないが、以下の駄文にも記したように、カザンの家系はトルコ語母語とするギリシャ正教徒「カラマンル」だった可能性もあるので、少しは話せたのかもしれない。

映画は1980年の軍事クーデター前の不安定な世相を背景にしている。当時のトルコは、すべてが霧の中であるかのように何一つ見通せない混沌とした状態だったらしい。

その後もトルコは、幾度となく危機的な状況に陥っている。2013年6月の「ゲズィ公園騒動」から2016年7月の「クーデター事件」に至る3年間も、まさしく霧の中を彷徨っているかのようだったが、最近はようやくその霧が晴れて来たように感じられる。

しかし、ロシアのウクライナ侵攻以来、今度は欧米や日本といった西側世界が深い霧に包まれてしまったかのようだ。ウクライナの状況を伝える報道には矛盾も多く、何一つはっきりしていない。

「切羽詰まったロシアは、やみくもにミサイルを発射している」などと報じられていたが、これに続くニュースでは「ロシアのミサイル攻撃によりウクライナの電気やガスを供給するインフラが破壊され、冬の迫るウクライナで市民の生活が脅かされている」と伝えながら、ロシアの非人道的な攻撃を非難している。

ミサイルは、やみくもに発射されたわけじゃなかったらしい。また、ロシアがこういったミサイル攻撃を手控えていたのも明らかなようである。いったい何が事実に近いのか? それは霧が晴れてから、はっきりするのだろう。

日本を覆う霧は、もっと深いかもしれない。欧米では、既にコロナが収束して、マスクの効果やワクチンの危険性も取り沙汰され始めたというのに、日本のコロナ報道は矛盾だらけで何も見えて来ない。

例えば、ネットなどに見られるワクチン接種後の死亡者数は、国がその因果関係を認めていない例が殆どであるという。しかし、数例に限っては、国も因果関係を認めているそうだ。

他の薬品なら投与後に死亡して、その因果関係が認められれば、数例であっても大騒ぎになるのではないかと思うが、いったいどうなっているのだろう?

日本を覆う霧はなかなか晴れそうもないような気がする。

2017年3月:イスタンブール