「ロシアから最も近い所にある米国の核兵器は?」。それはトルコ南東部インジルリクの米軍基地(NATO基地)に配備されている核兵器である、とナイム・バビュルオール氏は指摘していたが、実際に使用される可能性については否定している。
元軍人の外交専門家バビュルオール氏によれば、ロシアがウクライナに対して戦術的な核兵器を使用する可能性はある。
プーチン政権はウクライナへ侵攻する前から、どのような局面で核兵器を使用できるのか法的な整備を進めて来たが、そういった「局面」の一つとして、対正規軍との戦いで困難な状況に陥った時が挙げられているそうだ。
現在、ロシア軍はウクライナ軍との戦いで困難な状況に陥っているので、核兵器の使用にロシアの法的な根拠はあることになるらしい。その場合、西欧からの軍事支援を断つために交通の要衝を破壊するとしても、なるべく人の少ない地域を狙って人的な被害を最小限に止めようとするのではないかという。
これに対して、米国が核兵器で応戦する可能性はない。なぜなら、その報復として、ロシアが戦略的な核兵器の使用に踏み切れば、それは米国本土に被害をもたらすかもしれないからだ。
バビュルオール氏はそこまで述べていないが、米国はウクライナが焦土になっても自分たちは被害を受けたくないということなのだろうか?
そもそも、射程距離の長い兵器を侵攻直後から供与していれば、ロシアは早い段階で諦めて停戦に応じたかもしれない。米国の目的がウクライナを助けることではなく、ロシアを疲弊させるところにあるという説は決して否定できないように思える。
一方、この報道番組でロシアの専門家イリヤス・トプサカル氏は、ロシア人がウクライナ人を同胞と見做している点を強調していた。ロシア人とは、その人種・ルーツに拘わらずロシア正教を受け入れた人たちのことであるという。
ショイグ国防相のように、父祖がシャーマニズムのモンゴロイドであるトゥヴァ人であっても、正教に改宗すれば立派なロシア人として認められる。グルジア人のスターリンが独裁者として君臨できた理由もそこにあるのだろう。
トプサカル氏は「ムスリムになればトルコ人になるのと同じことだ」と説明していたけれど、こんなところにも、トルコとロシア、イスラムと正教の近さが感じられるような気がする。
トルコでは、ギリシャ正教徒の人たちがアラビア語を母語とする正教徒を同胞として認めていた。アラブ系正教徒の子弟もイスタンブールでギリシャ民族学校へ通うことができたのである。