メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

ロシア人にとってウクライナ人は同胞なのか?

ウクライナ軍は東部ドネツク州アブデーフカからの撤退を余儀なくされ、いよいよ困難な状況に陥っているらしい。

戦争は2年以上の長期に至ったが、ロシアは長い時間をかけて、ようやく目的に近づいたのではないかとも言われている。

トルコでは、当初より、ロシア軍の余りにも緩慢な動きに疑念を呈する論説が見られたりした。

例えば、国際政治学者のハサン・バスリ・ヤルチュン氏は、「ロシアは、何故、あの膨大な火力を使わないのか?」と論じていた。

ヤルチュン氏はシリアでロシア軍が全てを焼き尽くすような凄まじい火力による攻撃を行ったのを目の当たりにしたそうである。

そのためか、ヤルチュン氏には、「残虐なロシア」に対して、多少嫌悪感を懐いているような所が見受けられた。

一方、親ロシア的な論者によれば、ロシア人にとってウクライナ人は同胞であるから、無慈悲な攻撃を仕掛ける意図はさらさらなく、親米のゼレンスキー政権を倒すのが目的であるという。

私はこういった双方の論説を聞いて、30年以上前、まだソビエトが健在だった頃に何かで読んだ話を思い出した。

多分、モスクワに駐在している記者が書いた話じゃなかったかと思うが、「モスクワ市内に配備されている武装警官の多くが白人のロシア人ではなく、アジア系の容貌であることに気がついた人は観察力がある」というように述べられていた。

つまり、モスクワで白人のロシア人やウクライナ人が暴動を起こした場合、そのアジア系の武装警官らに「撃て!」と命じれば、何のためらいもなく、白人の暴徒を撃ち殺すことができるからだそうである。

その代わり、彼らの出身地であるカザフスタンウズベキスタン等々には、もちろん白人の武装警官らが配備されていたらしい。

ところで、私はこんな話を思い出しながら、また妙なことが気になってしまった。

イスタンブールの教会で交流を得た経験から、「ロシア人やウクライナ人ら正教徒には人種的な偏見が少ない」という印象がある。

実際、ロシアではアジア系のセルゲイ・ショイグ氏が国防長官にまで栄達したりしている。

しかし、モスクワやサンクトペテルブルク辺りのごく一般的な白人のロシア人に、「アジア系のロシア人とウクライナ人のどちらを、より身近な同胞と感じている?」と訊いたら、いったいどんな答えが返ってくるのか?

その答えを考えていると、もっと気になることが頭に浮かんでしまった。

ドイツやフランス等の西欧各国は、ロシアを脅威と見做して、日本にもウクライナを支援するよう求めているけれど、果たして一般的な西欧人は、日本人とロシア人を比べて、どちらが身近で親しみの感じられる存在であると思っているのだろう?