メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

ロシアの思想家アレクサンドル・ドゥーギン氏の論説/ロシアの敗北は有り得ない

トルコのアイドゥンルック紙(Aydınlık Gazetesi)は、24日~26日、3回にわたって、ロシアの思想家アレクサンドル・ドゥーギン氏の論説を掲載した。

親ロシア的なアイドゥンルック紙は「Gazete yazarı」とドゥーギン氏をあたかも同紙のコラムニストであるかのように扱っているけれど、これが2020年10月27日以来の記事だから「寄稿論文」といったものじゃないかと思う。

ドゥーギン氏は、日本の多くのメディアで「プーチン大統領に近い過激な思想家」というように紹介されているため、かなりプロパガンダ的な内容を予想していたが、ロシアの失策についても記されていて、それほど一方的な主張は見られない。

当初、ロシアはキエフを包囲してゼレンスキーを退陣に追い込み、より穏健な政権を成立させてから、西欧との関係を新たに構築する計画を立てていた。

しかし、この計画は思わぬウクライナの抵抗と西欧の支援によって頓挫する。そして、これが「特殊軍事オペレーション」などではない、総合的な戦争であることを、ようやく理解する。

ウクライナは、ロシアの行動に対して誰よりも準備が整っていた。キエフの政府を驚かせたことがあるとすれば、それはロシアの軍事的な不成功であり、これによって士気が高揚し、ウクライナはロシアと最後まで戦うことを決意したのである。・・・

要約すると、このようにロシアの最初の段階における失敗を論じている。何だか、日本の一部の親ロシア派の見方よりも遥かに冷静であるように思えた。

ドゥーギン氏は、この1年間の戦闘を6段階に分けて分析しながら、第3段階で西欧がテロ作戦に出たと述べて、「ロシアにおける市民の暗殺」「クリミアの橋の爆破」「ノルドストリームの破壊」を例に挙げたにも拘わらず、自分の娘の暗殺には言及していない。この辺りも、非常に冷静というか冷徹である。

その後、第4段階で、ロシアは西欧の投入したハイマース等の最新兵器により大規模な撤退を余儀なくされる。

しかし、これで総合的な戦争であることを理解したロシアは、部分的な総動員令を発令して第5段階に至り、ウクライナの各地へミサイル攻撃を敢行しつつ、反撃に出て盛り返す。

現在は第6段階にあり、戦局は膠着状態にあると分析している。

これほどまでに冷静なドゥーギン氏だが、「ロシアの敗北は有り得ない」と言う。その根拠は何とも恐ろしい。

NATOが全面的に参戦するなどして、敗北の可能性が高まれば、ロシアは核兵器を使わざるを得なくなり、それは「世界の破滅」を意味する。つまり、世界が破滅してしまえば、「ロシアの敗北」など論じる必要さえなくなるというのである。

一方、米国は、ウクライナの全土が占領されたとしても、NATOの結束等々、一定の戦果は得られるので、ウクライナを救うために核兵器を投入したり、ロシアを追い込んで核戦争を招くような危険は犯さない。

いずれにしても、ロシアの敗北は有り得ないということになる。

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