メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

続・ロシアの思想家アレクサンドル・ドゥーギン氏の論説/ロシアの道

アレクサンドル・ドゥーギン氏は、ドネツク州・ルガンスク州ザポリージャ州・ヘルソン州の併合が、ロシアにとって最低限の勝利だとしている。

完全な勝利はウクライナ全土の併合に他ならない。

しかし、この場合でも、西欧は軍事的・戦略的、そして経済的にも重大な損害は受けないという。

ロシアは、西欧から外れた悪魔的ものとして残り、ヨーロッパへの影響はゼロというよりマイナスにまで落ち、欧米連合はこのように危険な敵に対して、これまでになく結束を固めることができる。

一方、テクノロジーと最新のネットワークから切り離されたロシアは、敵とは言えないまでも、まったく忠実とは言えない非常に大きな人口の集団を一つの社会構造に統合して行かなければならない。これは戦争で疲れ果てた国のために絶大な労力を要する、といったように、その後の展望についてはかなり厳しい見方をしている。

ドゥーギン氏によれば、併合はウクライナにとって禍とは言えない。

ロシア政府内のあらゆるポジションを占めることが出来て、大ロシアの全土を自由に往来できるようになる。これを「ロシアがウクライナに併合された」と見ることも可能だろう。ロシア国家のいにしえの都は、再び、ロシア世界の周辺ではなく中心になるとドゥーギン氏は言うのである。

ドゥーギン氏のプーチン大統領に関する見解も非常に興味深い。

ソビエト崩壊後、ロシアのエリツィン政権は、主権を諦めて西側世界に入り、彼らのルールに従おうとした。将来の「世界政府」に、少しでも地位を得ようとしたのである。

当時、ロシアの全ての大学が、国際関係においてリベラリズムに与していた。国際関係における現実主義を忘れ、これをあたかも民族主義であるかのように言い、「主権」については全く話されなくなった。

これがプーチンの登場により、実際の政治において(教育ではなく)は全てが変わる。プーチンは国際関係において忠実なリアリストであり、主権をラディカルに支持する人物だった。

しかし、プーチンには、西欧の価値に基づく世界観があり、西欧の社会、学問、テクノロジーの進歩を文明の発展における唯一の道であると見ていた。執着していたのは主権だけだった。なんとか西欧との関係は維持しようとしていたのである。・・・

どうやら、ユーラシア主義者のドゥーギン氏にとって、プーチン大統領はかなり西欧寄りの人物に思えたらしい。

トルコにも同様の見解を明らかにする識者は少なくないようだ。

確かに、プーチン氏は、諜報部員の時代、長い間東ドイツに滞在していた。ドイツ語を流暢に話す知独派と言って良いかもしれない。

おそらく、西欧にとって、プーチン大統領はロシアの政治家としてかなり穏健な部類に属するのではないだろうか?

ドゥーギン氏によると、「特殊軍事オペレーション」が始まった当初、プーチンは単なるリアリストであり、それ以上のものではなかったという。しかし、この1年間で状況が変わった。

モダンな西欧のリベラル文明、グローバリズム、そして、西欧があらゆる他者に押し付けようとする価値観、この全てとロシアは戦争の状態にあることが理解された。戦争は、主権を守ることから始まって「文明の衝突」に至ったのである。・・・

ロシアは既にヨーロッパの国ではない、ユーラシアの正教文明であるとドゥーギン氏は言う。

ドゥーギン氏は3回にわたった論説の最後を以下のように締めくくっていた。

「2022年2月24日までのプーチン政権は、これを明らかにする時へ至る準備期間だった。しかし、準備期間はリアリズムの枠内に収まっていた。つまり、西欧型の発展と主権である。今、ロシアは、厳しい試練と恐ろしい犠牲による1年を経て、その様式を変えた。すなわち、主権と文明のアイデンティティー、言わばロシアの道である。」

www.aydinlik.com.tr