メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

トルコのユーラシア主義/それはトルコの道なのか?

トルコのアイドゥンルック紙へ論説を寄稿したユーラシア主義者のアレクサンドル・ドゥーギン氏によれば、ウクライナ戦争以前のプーチン大統領には、いくらか西欧寄りの傾向が見られたらしい。プーチン大統領は西欧との関係を何とか維持するように努めていたという。

トルコのエルドアン大統領も、かつては親欧米と見做されていたから、これは非常に興味深く感じられた。

ドゥーギン氏は、プーチン大統領について「西欧の価値に基づく世界観があり、西欧の社会、学問、テクノロジーの進歩を文明の発展における唯一の道であると見ていた」と述べているけれど、これはエルドアン大統領にも、ある程度は見られた傾向じゃなかったかと思う。

エルドアン大統領の次男ビラル氏は、米国へ留学(1999年頃~2003年頃)している。

これが本人の希望だったのかどうか解らないが、長女のエスラ氏も次女のスメイエ氏もやはり米国へ留学した。エルドアン大統領は、西欧の価値を結構重視していたような気もする。

このエルドアン大統領が欧米への不信感を鮮明にして、ユーラシア主義的な傾向を見せるようになったのは、2016年7月のクーデター事件以降ではないだろうか?

それまでは、意見の相違が指摘されながらも、メフメット・シムシェク副首相に経済政策を任せていた。シムシェク氏は欧米の基準に従った政策を進めていたと言われている。

シムシェク氏が閣僚から外されて政界を退いたのは、2018年の7月、大統領府によるシステムへ移行した時のことである。

昨年、何かの式典にシムシェク氏が姿を見せ、エルドアン大統領と仲良く並んでテープカットのセレモニーにも加わったため、親欧米派は「経済的な苦境でシムシェク氏の再登板か?」と色めき立ったようだけれど、それまでにも、シムシェク氏が大統領府を訪れ、エルドアン大統領と懇談したというニュースは何度か報じられている。

その度に再登板が取り沙汰されたものの、いつも憶測に過ぎなかった。今回も同様だろう。シムシェク氏は、経済政策で迎合するつもりはないと語ったそうである。

現在、エルドアン政権に影響力があるのではないかと言われているドウ・ペリンチェク氏は、かねてより、米ドルに依存した経済から脱却しなければトルコの発展はないという主張を繰り返して来た。シムシェク氏のような人たちが、こういった主張に反対するのは当然かもしれない。

しかし、昨年、トルコはロシアから輸入する天然ガスルーブル決済を認めたという。これは、トルコがいよいよユーラシア主義に近づいたということだろうか?

3月8日に報じられたところによれば、チャヴシュオール外相は、シリア問題の解決に向けて、トルコ・シリア・ロシア・イランの4者会談を計画していると明らかにした。

経済のことは良く解らないけれど、この4者会談が如何に画期的なことであるのかは理解できる。そして、これにユーラシア主義的な傾向が感じられることも・・・。

私はつい3~4年前まで、ユーラシア主義などというのは、トルコにとって危険極まりない思想であるかように感じていた。もちろん、NATO脱退なんて有り得るはずもない絵空事だった。

今、このいずれもが非常に現実味を帯びて来たことに私は驚いている。

しかも、これは西欧寄りだったエルドアン大統領がユーラシア主義の傾向を見せるようになったという話じゃないと思う。世界情勢の変化に応じて、トルコの国家としての方針が大きく変わって来たということであるかもしれない。

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