メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

エルドアン大統領と閣僚の意見の相違

トランプ大統領と閣僚らの間に、早くも意見の相違が見られるという話が伝えられているものの、トルコでは、エルドアン大統領と閣僚の意見の相違など、以前から珍しくもなかったような気がする。
例えば、エルドアン大統領が、「EUなどもう必要ではない」みたいなことをぶち上げているのに、メフメット・シムシェク副首相は、平気でツイッターに、「最も重要なのはEUとの関係」とか書き込んでいたそうだ。
また、トルコリラの下落に対して、エルドアン大統領は、「ドル預金をトルコリラに変えよう」なんて国民に呼びかけていたけれど、記者会見で意見を求められたシムシェク副首相は、苦笑いしながら、「大統領が呼びかけていたのは、『箪笥預金はやめよう』という意味です。お金は流通しなければ価値を生みませんから・・」などと勝手な解釈で、話をはぐらかしていた。
シムシェク副首相は、財務相の時代から、エルドアン首相と意見が合わず、閣僚人事がある度に、更迭の噂が飛び交って来たにも拘わらず、副首相に格上げされたうえ、相変わらず経済の舵取りを任されている。
財務相時代には、エルドアン首相を相手に、4時間に及ぶ経済状況のブリーフィングを行い、「首相には良く理解してもらえたと思います」と記者らにコメントした旨が報じられていた。
経済運営には絶対的な自信を明らかにしていたと言われる故オザル大統領ならば、経済に関して、4時間も閣僚の意見を聞くことはなかったような気がするけれど、どうなんだろう?
そもそも、以下の黒木亮氏の小説によると、当時のトルコでは、経済官僚らの専門的な知識も随分お粗末な状態だったらしい。オザル大統領に意見できる人など、閣僚の中にさえ殆どいなかった可能性もある。

 今は時代が変わり、欧米に留学してMBAを取得した官僚も珍しくないだろうから、より複雑になっている経済の運営は、オザル大統領のような経済通であったとしても、広く意見を求めて行うべきじゃないのか?
ひょっとしたら、経済・外交等、様々な分野に専門的な知識を持っている人物より、エルドアン大統領の方が、今の時代に適した指導者であるかもしれない。
しかし、EUを非難して、上海協力機構への参加を仄めかしたりするエルドアン大統領の態度に批判的なジャーナリストのエロル・ミュテルジムレル氏は、ユーラシア派と呼ばれる親ロシア的な人たちが、大統領府のアドバイザーの中にも少なくないと指摘しながら、以下のように語っていた。
「・・・こういった連中が、エルドアンに要らないことを吹き込んでいる。エルドアンは単純な人なので直ぐに影響されてしまう」
どうやら、意見を広く求めすぎるのも問題になるらしい。とはいえ、エルドアン大統領が、ミュテルジムレル氏の意見ばかり聞くようになったら、氏がこれをなんと評するのかは解らない。
いずれにせよ、現在のチャヴシュオウル外相も、基本的には欧米重視のようだから、それほど心配する必要はなさそうに思える。

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