昨日、エルドアン大統領の就任式が行われ、その後、閣僚の人事が発表された。
留任は文化観光相のエルソイ氏と保健相のコジャ氏のみで、後は総入れ替えとなったが、注目の財務相にはメフメット・シムシェク氏の再任が決まっている。
シムシェク氏はこの難局をどのように乗り切るのだろう? それなりの勝算があるのだろうか?
いずれにせよ、非常な決意でエルドアン大統領の要請に応じたのだと思う。
シムシェク氏とエルドアン大統領は選挙を前後して何度も会合を重ねたそうだが、その過程で、おそらくシムシェク氏は様々な条件を大統領に認めさせたのではないかと言われている。
それは、経済官僚の人事に関する権限、利上げの承認、中央銀行の独立性といったものであるらしい。そうなると、選挙前にエルドアン大統領が繰り返していた「利上げは行わない」という発言は何だったのかと思えてしまうけれど、あれも良くある選挙対策の一つに過ぎなかったのかもしれない。
さらに、シムシェク氏が、中央銀行の総裁へ「ハフィゼ・ガイェ・エルカン(Hafize Gaye Erkan)」という女性を就任させたい意向であることも取り沙汰されている。
まだ41歳と若いエルカン氏は、米国で活躍している新鋭のエコノミストであり、「Awesome Turkish girl」などと呼ばれたりしているという。実現すればトルコで初の女性の中央銀行総裁となる。
米国で活躍しているため、故ケマル・デルビシ氏に擬えたりする向きもあるようだが、以下の8年前のインタビュー動画を見ると、最後の方で、米国の政府関係者が中東問題の解決にはトルコが中心的な役割を担うべきと述べた話を嬉しそうに紹介している。なんだか結構「愛国的」な人物であるような気もする。
一方、財務相と共に注目されていた外相と国防相には、ハーカン・フィダン氏とヤシャル・ギュレル氏が抜擢されている。
フィダン氏は元軍人の国家情報局長官、ギュレル氏は軍の参謀長官。この人事もなかなか凄い。
フィダン氏はロシアやウクライナとの交渉にチャヴシュオール外相と共に携わって来たので、交渉の継続性を保つ意味でも最適と評価されているが、如何にも「諜報部」といった雰囲気の凄みを感じさせる人物である。
国防相はフルスィ・アカル氏に続いて、制服組の参謀長官が昇格ということになるけれど、文民統制の面から見てどうなのだろう?
この人事には、2016年7月のクーデター事件の後で、エティエン・マフチュプヤン氏が述べた以下の言葉を思い出してしまった。
「トルコの政治文化と民主主義の未成熟を考慮した場合、如何なる文民機構も、軍内部の無形のネットを監査しきれないことは明らかだ」