メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

エルドアン大統領とプーチン大統領

来年、トルコでは大統領選挙が実施される。現在の強権化された大統領制は、2017年4月の国民投票で改正された憲法に基づき、任期は5年で2期務めることができる。

2018年6月の選挙で当選したエルドアン大統領は、この大統領制では1期目と見做されるため、来年再選されれば、もう1期務めることができる。

当選には過半数の票を獲得する必要があり、どの候補も過半数を得られなかった場合は、決選投票が行われる。

エルドアン大統領は独裁者などと言われているものの、トルコでは軍の力も侮りがたい。実際は、世論や支持勢力、軍や官僚機構の微妙なバランスの上に大統領の権力が維持されて来たような気もする。

来年の選挙もエルドアン氏にとっては厳しい戦いになりそうだが、支持派も反対派も「与党AKPで過半数を取れる可能性があるのはエルドアンしかいない」という点では一致しているように見える。そのため、反対派はエルドアン降ろしに躍起になっていたし、支持派も何とかエルドアン氏を担ごうとしている。

ところで、どうなんだろう? エルドアン氏以外にも、現国防相のフルスィ・アカル氏ならば、過半数を取る可能性があるのではないだろうか? 

アカル氏は軍の参謀長官から国防相に昇格した生粋の軍人である。以下の駄文にも記したように、トルコで軍に対する国民の支持は絶大と言っても良い。

アカル氏は「2016年7月15日クーデター事件」当時の参謀長官であり、クーデターを企てたギュレン系将校らに拘束され、拳銃を突き付けられてクーデターに加担するよう脅迫されたにも拘わらず、要求を断固拒否したという。これにより、一部ではかなり英雄的な人気も得られている。

しかし、おそらくはアカル氏自身に大統領になる意志はなさそうである。年齢的にもエルドアン氏より年長であるところが難しい。また、仮にアカル氏が大統領になったら、欧米のメディアは「独裁者」の前に「軍事」も付けて非難の度合いを高めるかもしれない。実際、欧米にとっては、柔軟なエルドアン大統領よりも遥かに厳しい交渉相手となるに違いない。

以上は私の勝手な妄想で、あまり真に受けてもらっても困るけれど、エルドアン大統領が欧米にとっても良い交渉相手であるのは確かじゃないかと思う。

ロシアの状況については全く解らないが、ひょっとするとプーチン大統領にも同様のことが言えるのではないだろうか? 

ウクライナ戦争に関するトルコの時事討論番組で、ロシアに批判的な識者が「しかし、私はプーチンが狂っているとは思っていない。冷静沈着な政治家であり、何よりドイツ西欧のことを良く知っている・・」と述べていたけれど、確かにそうであるかもしれない。

サバー紙の主筆メフメット・バルラス氏は、10月8日のコラムで次のように述べていた。

「・・・国際世論はロシアを評価する際、プーチン個人に焦点を絞っている。ここで本当に評価を明らかにさせるのは、ロシアの伝統と国家体制であることを大方が外してしまっている。西側は全力でプーチンを政権から降ろそうとしている。しかし、重要な点を考えていない。プーチンの後任者は、おそらくもっと強硬な人物になるだろう。・・・」

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