メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

憲法改正

(1月26日)

「強化された大統領制」を含む憲法改正案が、議会の票決で、国民投票の実施を可能にする得票に達した。国民投票は、3~4月に行われるらしい。

現行の憲法は、80年の軍事クーデターによってもたらされたもので、大統領には、退役軍人が就くことを前提として、お目付け役的な権限が与えられたと言われている。行政には関与しないが、拒否権等によって、政府の活動を制限できるようになっているそうだ。

「退役軍人の前提」は、89年、文民のオザル氏が大統領に就任して崩れてしまったものの、AKP政権も2002~7年までは、憲法裁判所長官出身のセゼル大統領に抑えられて、それほど自由には動けなかった。

現在のエルドアン大統領は、この「お目付け役的な権限」に加えて、AKPの党内も完全に掌握しているため、実質的には、今でも改正案の大統領と変わらない権力を有しているという。

憲法改正を提議したMHPのバフチェリ党首が、その理由として、「実質に合わせて法を変えなければならない」と語っていたくらいである。

また、エルドアン大統領は、AKPの連続4選禁止という党綱領を反故にしてしまえば、意のままの人物を大統領に据えて、首相職を続行することも可能だった。エルドアン大統領に対抗できるような人物は、AKP党内にいないからだ。

そのため、おそらく2014年頃までは、地方自治の拡大なども念頭に置いた「民主的な憲法に基づく大統領制」を構想していたのではないかと論じる識者も少なくない。

しかし、非常に国家主義的なMHPの協力による現改正案には、そういった斬新さも見られないようである。「AKPによる急速な民主化」を期待していた識者の多くは、失望を明らかにしている。

2016年12月3日(土)

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