メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

モルドバ共和国のガガウズ人

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このYouTubeの動画では、トルコ人のアルダ氏がモルドバ共和国のガガウズ自治区トルコ共和国政府の協力によって設立された学校を訪れ、トルコ語の授業の様子などを紹介している。

モルドバ共和国の主要な言語はルーマニア語だが、自治区のガガウズ人はトルコ語に近いガガウズ語を話し、他のモルドバ人との共通語はロシア語になるらしい。

私もイスタンブールにあるロシア正教の教会でガガウズ人と出会ったことがあるけれど、トルコへ来て未だ1年しか経っていないと言うのに、とてもきれいなトルコ語を話していた。

ガガウズ語は、トルコ語アゼルバイジャン語と同じ西オグズ諸語に分類され、ウズベク語などより遥かにトルコ語に近いそうである。

しかし、ガガウズ人はキリスト教徒(正教徒)であるところが、他のトルコ系諸族とは大きく異なっている。

上記の動画では、アルダ氏を学校へ案内したトルコ人の教員が、トルコ民族主義的な観点から、トルコ人もガガウズ人もルーツは同じであり、ガガウズ人はシャーマニズムからイスラムではなくキリスト教へ移行したか、あるいはイスラム教徒だったのが政治的な圧力によりキリスト教へ改宗したのではないかと説明しているけれど、果たしてどうだろうか?

私が教会で出会ったガガウズ人は、自分たちのルーツが、かつてアナトリアに存在したカラマンルと呼ばれるトルコ語母語とするギリシャ正教徒だったかもしれないと話していた。

このカラマンルも、トルコ民族主義的な観点によれば、ルーツはトルコ人と同じ中央アジアということになっているようだが、カラマンルの子孫であるディモステニス・ヤージュオール氏は、以下のサイトで異なる見解を明らかにしている。

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ヤージュオール氏によると、カラマンルが歴史上に姿を現した12世紀のアナトリアは、既にセルジュークやカラマン侯国といったイスラム教徒のトルコ系諸族の支配下にあり、トルコ語を話すイスラム教徒がキリスト教へ改宗することは許されなかっただろう。

また、カラマン侯国は、歴史上初めて支配地域の住民にトルコ語の使用を強要したことで知られているそうだ。しかし、イスラムへの改宗は強要しなかったため、カラマンルの人々はキリスト教の信仰を守りながら、トルコ語を話すようになったのではないかと言うのである。

そもそも、コーカソイドの容貌である現在のトルコ人のルーツがどのくらい中央アジアまで遡れるのか疑わしい。DNAを調べても、中央アジアのルーツは殆ど確認されないらしい。

アルダ氏を案内した教員には、少し中央アジア的な雰囲気も感じられるけれど、アルダ氏は「ドイツ人」と言っても通りそうなくらい完璧なコーカソイドじゃないかと思う。ガガウズ人の生徒たちも、皆、アルダ氏と変わらないコーカソイドの容貌である。

ところで、この動画はいつ撮影されたのだろう? 配信は11月10日となっているから、おそらくこの1ヵ月ぐらいの間ではないのか。

そうであれば、既にモルドバにも、ウクライナ侵攻の影響は表れていたはずだが、アルダ氏から何処へ移住したいのか問われたガガウズ人の女生徒が「トルコかロシア」と答えたのはなかなか興味深く思えた。