メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

ウクライナの穀物を安全に輸出するための協定

先週(7月22日)、イスタンブールで「ウクライナ穀物を安全に輸出するための協定」が調印された。昨日(7月27日)は、この協定の履行を監督するコーディネーションセンターがオープンしたという。

センターはイスタンブールにある国防大学のキャンパス内に開設され、トルコ・ロシア・ウクライナ・国連から各5人の代表者が業務に当たるそうだ。

調印の翌日、ロシア軍がオデッサを攻撃、標的は協定に反しない軍事施設であると表明したものの、ウクライナ側は非軍事的な港湾施設と主張して早くも協定の先行きに暗雲が垂れ込めたかに見えた。しかし、今のところ、協定の実施に向けて双方が歩み出したようである。

なにしろ戦争の真っ只中であり、双方の主張が大きく食い違っているのは当然かもしれない。情報戦・心理戦といった側面もあるだろう。いずれの発表も鵜呑みにするわけにはいかないと思う。

ところで、代表者の多くは軍関係者と言われているけれど、ロシアとウクライナの軍人たちが業務以外でどんな会話を交わすのか気になる。また、それは何語の会話になるのだろう?

これは些末な事柄かもしれないが、今回の穀物輸出に関わる過程で、なんだか腑に落ちないのは、ゼレンスキー大統領が前面に現れていなかったように思えるところだ。

調印を前にして、エルドアン大統領はテヘランプーチン大統領と会談している。8月5日にはロシアのソチを訪れるという。ところが、以前、何度か報道されたゼレンスキー大統領との電話会談といったものが、最近は殆ど伝えられていなかったような気がする。(訂正:当初、一部のトルコメディアがエルドアン大統領の訪問先はモスクワと報じていたため、そう記しましたが、どうやらソチであるようです。)

ゼレンスキー大統領については、検事総長らの解任が大きく報じられ、政権内に対立が見られるとか、さらには軍部のクーデターまで予想する説も飛び交っている。

穀物輸出の交渉でも、前面に出ていたのは軍人たちだった。もっとも、航路の安全が重要な課題であるため、トルコ側もロシア側も軍が大きな役割を果たしているけれど、エルドアン大統領とプーチン大統領も関与しているのは明らかである。ゼレンスキー大統領はどのように関与していたのだろう?

いずれにせよ、この協定が実際に実を結ぶのかどうかは、ウクライナから積み込まれた穀物が無事にイスタンブールを経由して輸出先へ至った時点で明らかになる。それを祈りながら今後に注目したい。