日々の生活の中で息苦しさを感じたら、人はそれを癒すために何をするだろう。私は音楽を聴くことで最も癒されてきたのではないかと思う。
もちろん、音楽を聴くのは、息苦しさを癒す時ばかりじゃない。楽しかったり悲しかったりと様々な気分に合わせて聴く。聴きながら、さらに嬉しさがこみあげて来ることもあれば、もっと悲しくなってセンチメンタルな気分に浸ったりもする。
いずれにしても、私がそうやって音楽を聴く時は、いつも1人である。周りに他の人がいたら、癒されることもなければ、感情が高まることもないだろう。
だから、コンサートなど、まず行こうとは思わなかった。そもそも、1人で聴きながら、思わず涙ぐんだり、感情のほとばしりに任せて何か口走ったりしているから、とてもそんな姿を他人様へ見せるわけにはいかない。
実を言うと、私は飲食も結構一人で楽しむのが好きだ。周囲に気を使う必要もないし、料理や酒の風味に一層集中することができる。1人暮らしも満更ではないのである。
何処で読んだのか忘れたけれど、あの社交好きで知られたモーツァルトも、ウイーンのレストランを1人でふらっと訪れて、夕飯を食べて行ったりしたそうだ。それも、必ず同じ席に座って同じ料理を注文したという。
ウイーンには、そのレストランもその席も未だそのまま残っているらしい。一度ぐらい、そこで食事したい気もするが、まあ、そういう機会はないでしょうね。
昨年の音楽の聴き納めは、ベートーヴェンのピアノ協奏曲4番で珍しく全曲通して聴いた。今年の聴き始めは、モーツァルトの交響曲29番の第1楽章。
どちらも、40余年にわたって最も多く聴いて来た曲じゃないかと思う。殆ど毎日のように聴いていたこともある。