メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

読書・映画・音楽

西欧や日本は没落を迎えるのか?

小説「魔の山」に描かれた100年前の西欧、小説の舞台が結核のサナトリウムであるように、当時、未だ予防接種も治療薬もなかった結核は「死病」と恐れられ、現在のコロナとは比較にならないほどの死者を出していた。また、結核は高齢者に限らず、多くの健…

魔の山

少しずつ読み進めていたトーマス・マンの「魔の山」(岩波文庫)をようやく読了した。もっとも、確かなのは「ページを捲って最後まで行き着いた」という事実だけかもしれない。余りにも難解なため、何処まで「読めた」のか甚だ心もとない。 私は小説を読むの…

83歳のマエストロは青春の真っ只中!

今年はベートーヴェンの生誕250周年であるそうだ。そのため、大晦日の恒例になっている「第9」の演奏会が各地でひときわ盛大に催されるはずだったが、これもコロナ騒ぎの影響を受けているかもしれない。 私にとってもベートーヴェンは、今まで最も良く聴…

アルプス交響曲/侘しい年の瀬

《2008年12月29日付け記事を修正して再録》 リヒャルト・シュトラウスのアルプス交響曲の冒頭、あの夜明けの場面を聴くと、何だか雄大な山の景色が迫ってくるように感じられる。 しかし、あれは本当に曲を聴いて山の景色が連想されたのか、それとも…

アラビア語の賛美歌/イスラムの聖歌

Mersin Rum Ortodoks Kilisesi Korosu - İfrahi Ya Bayta Aniya (Sevin Ey Beytanya) メルシン(トルコの地中海沿岸)の東方正教会の教会で、聖歌隊が歌う賛美歌。ギリシャ語ではなく、アラビア語で歌われている。 2010年の3月、メルシンを訪れた際、こ…

ヴィルヘルム・バックハウス最後の演奏?

《2007年4月12日付けの記事を修正して再録》 クラシック音楽で、「どの曲には誰の指揮が良い」なんていう付け焼刃の知識は、殆どが高校時代に同級生の友人から得たものである。 友人は御両親が音楽の先生であり、子供の頃からクラシック音楽に慣れ親…

「ベートーヴェンのロマンス」

《2014年12月10日付け記事の再録》 2014年の9月頃じゃないかと思うが、ネットに「ベートーヴェンは、なかなか艶福家だった」などという記事が出ていた。ベートーヴェンは、独身のまま一生を終えたので、あまり女性にはモテなかったのではないか…

「王子と乞食」

《2014年3月10日付け記事の再録》 小学生の頃、区の図書館から本を借りて来て良く読んだ。その多くは、“少年少女文学全集”といった類の本で、海外の文学が子供向きに平易に訳されていた。ジュール・ベルヌの作品であるとか、ルパンやホームズが活躍す…

小津安二郎の生誕と命日

「12月」は、その作品を親しんで来た人たちの命日が多い月なのかもしれない。5日はモーツァルト、8日がジョン・レノンで9日は夏目漱石、そして今日、12月12日には小津安二郎が亡くなっている。 ジョン・レノンは訃報をリアルタイムで聞いて、かなり…

ポール・マッカートニー/ビートルズ

《2013年11月28日付け記事の再録》 ポール・マッカートニーの日本ツアー(2013年11月)、YouTubeで少し観たけれど、その若さにびっくりした。とても71歳には見えない、声もそれほど衰えていなかったそうだ。そのエネルギーは何処から湧いて…

「漱石の罠」

《2014年1月27日付け記事の再録》 夏目漱石の「三四郎」。物語が始まって間もなく、三四郎は美禰子と出会い、これがそのうち大恋愛に発展するのかと思って読んで行くと、物語の終わり近くになって、突然、美禰子の婚約者が現れ、三四郎は衝撃を受けて…

モーツァルトの死とレクイエム

《2014年2月16日付け記事を省略して再録》 今日「12月5日」はモーツァルトの命日だそうである。モーツァルトの死に関しては、あの「レクイエム」に纏わる伝説が知られている。 モーツァルトは、作曲に取り掛かっていたレクイエムを完成させること…

天才の自尊心?

《2014年10月31日付け記事の再録(2)》 私はこの「カシアス・クレイ (1972年) 」を、中学生の頃に読んだのではないかと思う。不世出の天才ボクサー“モハメド・アリ”の半生が綴られている。 著者のトレス氏もライト・ヘビー級の名チャンピオンとし…

K-POP:YUKIKA유키카/Sarah Chang(장영주)

昨日、ネットで以下の記事を読んで驚いた。韓国の芸能界で活躍する若い日本人女性へのインタビュー記事である。 韓国のニュースは結構気にしているし、福岡ではK-POPファンの集まる店などにも出かけていたのに、この女性の活躍については何も知らなかった。 …

「人間は必ず死ぬ/犠牲祭」

《2016年9月12日付け記事の再録》 7月15日のクーデター事件後、多分、西欧の放送局によるインタビューだった。 エルドアン大統領は、「アタテュルク空港への着陸を強行した際、死の危険を考えなかったのか?」という問いに対して、「人間は必ず死…

コロナ騒ぎの迷走/人間の「死」と「生」

コロナ騒ぎが相変わらず迷走を続けている。いったいどうなってしまったのかと思う。 感染者が増えたと騒がれているものの、重篤者・死亡者は殆ど増えていない。その多くは無症状者であるという。インフルエンザにも不顕性感染というのがあるそうだから、こち…

インターナショナル賛歌!

1962年のソビエト映画「私は20歳」では、制服の兵士が歩いている冒頭のシーンにインターナショナルが流れている。このシーンが奇妙に感じられたのは何故だろう? おそらく、国家権力への抵抗の歌と思っていたインターナショナルが、国家権力を象徴する…

ソビエト映画「私は20歳」

《2011年5月12日付けの記事を修正して再録》 「私は20歳」という1962年に制作されたソビエトの映画。私はこれを1990年、つまりトルコへ渡る前に、神保町の岩波ホールで観たように記憶していたが、調べて見ると、この作品が岩波ホールで上映…

同調圧力

先週、ようやく昨年末から読み続けていた「翔ぶが如く」を読了した。 「西南戦争」で薩摩軍は異様な強さを発揮したという。突撃の際、我先にと敵陣へ斬り込んで行ったそうだ。一方、防戦で持ちこたえられずに崩れ始めると、今度は脱兎の如く逃げ出したらしい…

韓国映画「パラサイト」

アカデミー賞で話題になった韓国映画「パラサイト」、未だ予告編しか見ていない。ネットで検索して「あらすじ」を読んだところ、面白そうだけれど、少し話が陰惨でどぎつ過ぎるように思えた。 私のように情けない人生を送ってくると、映画ぐらいは「爽やかで…

日本統治時代の朝鮮

私は、1989年の9月から4ヵ月ぐらいの間、日本で韓国から来る旅行者の案内もしていた。サムスンやLGといった大企業が送り込んでくる“研修旅行者”の団体が顧客だった。 一度、5~6人の小グループを、自分でワンボックスカーを運転しながら案内して、…

民族と国家:イスラム史の視角から

1991年に初めてトルコへ渡航する前、東京都内でトルコ語の講座に通ったことはあるものの、それ以外にトルコの歴史や宗教について特に学んだりしたわけではない。 そういった分野の知識は、その殆どが渡航後にトルコ語の新聞等を読みながら得た雑学で成り…

「風と共に去りぬ」は何故美しい?

池田信夫氏のブログに、人間の本質には利他的な傾向もあるといった説が紹介されていた。集団として行動する場合、個々が利己的な集団は、利他的な個々が団結した集団との戦いに敗れてしまうため、進化の過程で利他的な性格を発展させてきたそうである。しか…

風と共に去りぬ

半年ほど前、映画「風と共に去りぬ」を“YouTube”で購入して観た。全編通して観たのは、多分、三度目ぐらいだったのではないかと思うけれど、観るたびに感動を新たにしている。この映画には、南部の奴隷制度を肯定的に描いているといった批判もあるようだが、…

「学問のすすめ」私立の精神

「学問のすすめ」では、官の主導に頼らない私立の精神が、最も重要な課題の一つとして説かれていたように思う。トルコの共和国革命も、日本の明治維新と同様、官の主導による「上からの改革」だったと言われているが、当時のトルコに、私立の重要性を説いた…

学問のすすめ

福沢諭吉の著作をいくつか読んでみようと思い立ったのが14年前、以来、「文明論之概略」と「福翁自伝」は何とか読んだものの、「学問のすすめ」にはなかなか手がつかなかった。やっとそれを、帰国の際に立ち寄ったモスクワの空港で読み始め、先週、ようや…

恋人たちの日の妄想~漱石の「三四郎」

週末のソープランド通いを正直に打ち明けてしまった友人。彼は、相手の女性が、初対面の印象として、自分に好意を懐いてくれたかもしれないとは全く考えなかったのだろうか?もしも、彼女が胸をときめかしていたならば、友人の返答は、失礼を通り越して、非…

人間は必ず死ぬ/犠牲祭

7月15日のクーデター事件後、多分、西欧の放送局によるインタビューだった。エルドアン大統領は、「アタテュルク空港への着陸を強行した際、死の危険を考えなかったのか?」という問いに対して、「人間は必ず死ぬんですよ。突然、交通事故で死ぬかもしれ…

戦争と平和

中国の杭州で開催されたG20、もちろんトルコでは、エルドアンとオバマの会談が話題になっている。会談の中身で注目されているのは、シリア情勢、そしてフェトフッラー・ギュレン師の送還である。 まだ楽観的には考えられていないようだが、「送還も有り得…

日本教/山を呼び寄せるモハメッドの話

先月の28日の駄文に、自分は俗にいう「日本教」の信者かもしれないと書いたけれど、この「日本教」という言葉は、山本七平が以下の著作で明らかにした「四教合一論的日本教徒」のようなものだと思いながら使っていた。 それから、ウィキペディアで「日本教…