メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

「イスタンブールには船で行け!」:ラフマニノフのピアノ協奏曲

 「イスタンブールには船で行け!」。誰の言葉だったのか忘れてしまったが、1991年の4月に初めてトルコへ渡航する前、何かの本で読んでいたのではないかと思う。

そのため、1991年の4月、私はイスタンブールの空港に降り立つと市街地へ足を踏み入れることもなく、近くのバスターミナルから、語学教室への入学を予定していたイズミルへ向かった。そして、イスタンブールを離れるまで、バスの窓からなるべく外を見ないようにしていた。

イスタンブールを訪れたのは、その7月か8月、語学教室が夏休みになってからだ。それも、まずはアンカラへ行き、そこからバスでイスタンブールを目指したのである。

しかし、船で行くためには、アジア側で降りてボスポラス海峡を渡らなければならない。当時、長距離バスの多くは、アジア側でボスポラス海峡に面するハーレムのバスターミナルを経由していたが、私はウスキュダルから船で渡ることに拘っていた。それで、バスの運転手さんに訊いて、下をウスキュダルへ行くミニバスが通るという陸橋の袂で下ろしてもらった。

その日は天気も良く、ウスキュダルの船着き場に出て、遠くヨーロッパ側にスレイマニエ・モスクの姿が見えた時の感動は今でも忘れられない。

乗り込んだ船はスレイマニエに向かって海峡を渡って行く。私は船首に近い前方が見渡せる所に立って、その光景を凝視していたけれど、多分、頭の中には「ラフマニノフのピアノ協奏曲2番の3楽章」が鳴り響いていたはずだ。

あれから30年、今でもあの3楽章は、私にとってイスタンブールのテーマ曲であり続けている。イスタンブールに居た頃も、船で海峡を渡る時、良く頭の中で鳴り響かせたりした。今は曲を聴くたびに、イスタンブールの海峡の光景を懐かしく思い出すのである。


H. Grimaud 3/3 Rachmaninov piano concerto No.2 in C minor, op.18 [Allegro scherzando]

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