どういう映画で観たのか忘れたけれど、チャールトン・ヘストンの演じる男が安楽死を望んで横たわり、ベートーヴェンの交響曲「田園」を聴いているシーンがあった。
私なら、そのような場面で、果たしてどんな曲を聴きたくなるだろうか? なんて、またつまらないことを考えてしまった。
モーツァルトのレクイエムと言いたいところだが、あの冒頭3曲では余りにも激しすぎる。
マーラーの交響曲5番の「官能のアダージェット」? 死んでも死にきれないような気がする。
シューベルトの交響曲「ザ・グレート」の1楽章~2楽章が良さそうだ。この曲を聴くと、いつもロマンティックな気分に浸れる。私の「青春の歌」だと思う。
シューベルトは「ザ・グレート」を作曲した翌年に31歳で亡くなったという。「歌曲王」などと呼ばれているけれど、本当はベートーヴェンのような交響曲作家を目指していたのではないだろうか?
ベートーヴェンは、その年齢(30歳)で交響曲第1番を作曲したばかりだった。モーツァルトも38番「プラハ」を未だ作曲していなかった。
シューベルトは余りにも早く亡くなったため、不当に低く評価されてきたように思われてならない。
しかし、「シューベルトが60歳まで生きていたらどうなっていたか?」なんて考えてもしょうがない。私たちが知っているのは「31歳で死んだシューベルト」であって、60歳まで生きていたら、それは別の人になっていただろう。
私たちにとっては、「31歳で死んだシューベルト」が尊いのだと思う。