メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

読書・映画・音楽

同調圧力

先週、ようやく昨年末から読み続けていた「翔ぶが如く」を読了した。 「西南戦争」で薩摩軍は異様な強さを発揮したという。突撃の際、我先にと敵陣へ斬り込んで行ったそうだ。一方、防戦で持ちこたえられずに崩れ始めると、今度は脱兎の如く逃げ出したらしい…

韓国映画「パラサイト」

アカデミー賞で話題になった韓国映画「パラサイト」、未だ予告編しか見ていない。ネットで検索して「あらすじ」を読んだところ、面白そうだけれど、少し話が陰惨でどぎつ過ぎるように思えた。 私のように情けない人生を送ってくると、映画ぐらいは「爽やかで…

日本統治時代の朝鮮

私は、1989年の9月から4ヵ月ぐらいの間、日本で韓国から来る旅行者の案内もしていた。サムスンやLGといった大企業が送り込んでくる“研修旅行者”の団体が顧客だった。 一度、5~6人の小グループを、自分でワンボックスカーを運転しながら案内して、…

民族と国家:イスラム史の視角から

1991年に初めてトルコへ渡航する前、東京都内でトルコ語の講座に通ったことはあるものの、それ以外にトルコの歴史や宗教について特に学んだりしたわけではない。 そういった分野の知識は、その殆どが渡航後にトルコ語の新聞等を読みながら得た雑学で成り…

「風と共に去りぬ」は何故美しい?

池田信夫氏のブログに、人間の本質には利他的な傾向もあるといった説が紹介されていた。集団として行動する場合、個々が利己的な集団は、利他的な個々が団結した集団との戦いに敗れてしまうため、進化の過程で利他的な性格を発展させてきたそうである。しか…

風と共に去りぬ

半年ほど前、映画「風と共に去りぬ」を“YouTube”で購入して観た。全編通して観たのは、多分、三度目ぐらいだったのではないかと思うけれど、観るたびに感動を新たにしている。この映画には、南部の奴隷制度を肯定的に描いているといった批判もあるようだが、…

「学問のすすめ」私立の精神

「学問のすすめ」では、官の主導に頼らない私立の精神が、最も重要な課題の一つとして説かれていたように思う。トルコの共和国革命も、日本の明治維新と同様、官の主導による「上からの改革」だったと言われているが、当時のトルコに、私立の重要性を説いた…

学問のすすめ

福沢諭吉の著作をいくつか読んでみようと思い立ったのが14年前、以来、「文明論之概略」と「福翁自伝」は何とか読んだものの、「学問のすすめ」にはなかなか手がつかなかった。やっとそれを、帰国の際に立ち寄ったモスクワの空港で読み始め、先週、ようや…

恋人たちの日の妄想~漱石の「三四郎」

週末のソープランド通いを正直に打ち明けてしまった友人。彼は、相手の女性が、初対面の印象として、自分に好意を懐いてくれたかもしれないとは全く考えなかったのだろうか?もしも、彼女が胸をときめかしていたならば、友人の返答は、失礼を通り越して、非…

人間は必ず死ぬ/犠牲祭

7月15日のクーデター事件後、多分、西欧の放送局によるインタビューだった。エルドアン大統領は、「アタテュルク空港への着陸を強行した際、死の危険を考えなかったのか?」という問いに対して、「人間は必ず死ぬんですよ。突然、交通事故で死ぬかもしれ…

戦争と平和

中国の杭州で開催されたG20、もちろんトルコでは、エルドアンとオバマの会談が話題になっている。会談の中身で注目されているのは、シリア情勢、そしてフェトフッラー・ギュレン師の送還である。まだ楽観的には考えられていないようだが、「送還も有り得…

日本教/山を呼び寄せるモハメッドの話

先月の28日の駄文に、自分は俗にいう「日本教」の信者かもしれないと書いたけれど、この「日本教」という言葉は、山本七平が以下の著作で明らかにした「四教合一論的日本教徒」のようなものだと思いながら使っていた。それから、ウィキペディアで「日本教…

レクイエム

今日(1月29日)は良く晴れて気温も10℃ぐらいまで上がり、少し残っていた雪もきれいさっぱり融けてしまった。“喜びの丘”に登って景色を眺めながら、自分もそのうち、あの雪のようにすっと消え果ててしまうのかと、つまらない感傷に浸ってみたりして、相…

エギナの聖ネクタリオス

ソウルの聖ニコラス大聖堂で頂いてきた「エギナの聖ネクタリオス」は、まだ“序論”や“訳者あとがき”に目を通したぐらいだが、ネットで検索してみたところ、聖ネクタリオスについては、ウィキペディアにも「エギナのネクタリオス」という項目が掲載されていた…

サッフォーの詩

ボズジャ島の催し、今年はギリシャ領のレスボス島が見渡せる“アヤズマ”の海岸で、「サッフォーを読む会」になった。土曜日に、主催者のハールク・シャーヒンさんから、「サッフォーの詩の日本語訳で知っているのがあったら読んでくれないか・・・」と頼まれ…

映画“ミッドナイト・エクスプレス”の俳優

1978年に公開された“ミッドナイト・エクスプレス”という映画。麻薬所持で逮捕された米人が、トルコの刑務所から脱走するというストーリーで、事実をもとに映画化されたという。2006年5月21日付けのミリエト紙で、映画に出てくるスウェーデン人服役囚のモ…

アラビアのロレンス

“アラビアのロレンス”は、1971年、銀座にあった“テアトル東京”という映画館へ連れて行ってもらって初めて観た。小学校4年生だった。まずは、“テアトル東京”の豪華さに驚かされた。見慣れた錦糸町・江東楽天地の映画館とはえらい違いである。あんな豪華…

国歌~校歌~寮歌

これまで“君が代”聴いて感動したことは殆どなかった。あまり好きなメロディでもない。士気を高めるために、国旗を揚げて、音楽で盛り上げるなんて、元来が西欧の発想じゃないかと抵抗を感じていた時期もある。 あれは、他国の支配から独立したり、革命で新し…

ベートーヴェンのロマンス

3ヵ月ほど前じゃないかと思うが、ネットに「ベートーヴェンは、なかなか艶福家だった」などという記事が出ていた。ベートーヴェンは、独身のまま一生を終えたので、あまり女性にはモテなかったのではないか、恋焦がれながら、結局ロマンスを成就できなかっ…

山を呼び寄せるモハメッドの話

夏目漱石の「行人」に以下のような話が出てくる。我執に苦しむ主人公の一郎(兄さん)に対し、友人のH氏(私)が宗教的な信仰を勧める場面である。 ****************** (以下引用)私がまだ学校にいた時分、モハメッドについて伝えられ…

秋刀魚の味

昨年の4月に韓国を訪れた際、ソウルの地下街に出ていた屋台で、いくつか邦画のDVDを買った。 小津安二郎の「秋刀魚の味」や黒澤明の「七人の侍」等々・・・。一つ2千ウォン(約2百円)の格安だったから、もっと買っておけば良かった。全てハングルの字…

王子と乞食

小学生の頃、区の図書館から本を借りて来て良く読んだ。その多くは、“少年少女文学全集”といった類の本で、海外の文学が子供向きに平易に訳されていた。ジュール・ベルヌの作品であるとか、ルパンやホームズが活躍する物語、“モンテ・クリスト伯”を十分の一…

韓流~漱石の「三四郎」

88年、韓国に留学していた頃は、下宿で連続ドラマを毎日のように観ていた。当時、まだ“韓流”なんて言葉はなかったと思うけれど、なかなか面白い連続ドラマが多かった。その中でも特に楽しみにしていた“ネイル・イジュリ(明日、忘れよう)”を最後まで観ら…

モーツァルトのレクイエム伝説

“盲目の画家”が描いた絵に、どういう価値を見出して“感動”できるのか良く解らないが、そもそも“感動”などという心の動きは、大概、要因のはっきりしない怪しげなものであり、「何故か?」なんて考える前に、とにかく“感動”してしまえば良いのだろう。 しかし…

断絶された朝鮮の歴史

やはり86年頃だったと思う。韓国関連の本の中で、司馬遼太郎と鮮于煇(ソヌ・フィ)の対談に、強い感銘を受けた。鮮于煇は、韓国の小説家で、司馬遼太郎とほぼ同年輩の人物である。 それが対談の中の会話だったのか、鮮于煇氏によって加筆された文だったの…

凍土の共和国

「凍土の共和国」という北朝鮮の悲惨な状況を伝えた本がある。私はこれを高校卒業して間もない頃に読んだような記憶があったけれど、ネットで調べてみたら、同著が出版されたのは84年となっていた。どうやら、卒業して8年以上経ち、韓国への語学留学を考…

俺の墓に唾を吐け

前回、お伝えした趙甲済氏の「내 무덤에 침을 뱉어라(俺の墓に唾を吐け)」。大阪にいた97年~98年にかけて、私は「朝鮮日報」の連載から、この作品を第3巻まで読んでいた。私たち日本人にとって、最も興味深いのは、その 3巻の部分じゃないかと思う…

漱石の罠

夏目漱石の「三四郎」。物語が始まって間もなく、三四郎は美禰子と出会い、これがそのうち大恋愛に発展するのかと思って読んで行くと、物語の終わり近くになって、突然、美禰子の婚約者が現れ、三四郎は衝撃を受けてよろめき、読んでいる我々も大いに驚いて…

ポール・マッカートニー

ポール・マッカートニーの日本ツアー、“YouTubet”で少し観たけれど、その若さにびっくり。とても71歳には見えない。声もそれほど衰えていなかったそうだ。そのエネルギーは何処から湧いて来るんだろう? 多分、節制して、日々鍛錬を怠っていないのではない…

ミッドナイト・エクスプレス

広島・長崎への原爆投下に関する発言で、オリバー・ストーンが話題になっていた。オリバー・ストーンと言えば、私は直ぐにあの“トルコに対する悪意に満ちた映画ミッドナイト・エクスプレス”を思い出してしまう。ストーンが脚本を書いたそうだ。その為、この…