メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

エルドアン

トルコの厳しい現実

イスタンブールの正式な名称は、20世紀の初頭に至るまで「コンスタンティニイェ」だった。当時は、市の人口の半数近くをギリシャ正教徒やユダヤ人のような非イスラム教徒が占めていて、コスモポリス的な雰囲気が漂っていたそうである。 現在は、その殆どが…

どちらが裏切ったのか?

トルコでは、アブドゥルラー・ギュル前大統領やアリ・ババジャン元副首相といったAKPの重鎮らによる新党結成がいよいよ実現するらしい。 エルドアン大統領は、これを裏切り行為であると詰りつけているけれど、どうなんだろう? AKPは、当初、「軍の影…

「ワインを飲むイスラム」と「イスラムのモディ首相」?

配送センターで働くムスリム・インド人就学生のサイードさんが、トルコ企業の社員となっている弟さんに電話して、イスタンブールの市長選挙などについて訊いたそうだ。 ギュレン教団系の学校でトルコ語を学んだという弟さんは、兄と同じく信仰に篤いムスリム…

オジャラン氏のメッセージ・・・

最近の週末は、部屋に籠ったままネットでトルコの新聞記事を拾い読みして、ここに駄文を書いたりするだけで終わってしまう。何だか何処で暮らしているのか解らなくなる。しかし、やはりトルコのニュースは気になって仕方がない。 先週は、イムラル島の特別な…

アタテュルク~エルドアン大統領

1920年、オスマン帝国がセーヴル条約を締結すると、ムスタファ・ケマル(後のアタテュルク)を中心とする有志軍人らは、これに反対して救国戦争(または独立戦争)を戦い、西欧と新たにローザンヌ条約を締結、トルコ共和国という国民国家を樹立する。セ…

富国強兵のトルコ

エルドアン氏が再選されたトルコの大統領選挙は、ほぼ政権側のメディアが予測した通りの結果になった。政権側メディアは、「エルドアン大統領の勝利は確実と思われるが、これまでの選挙と同じく拮抗した戦いになるだろう」として、支持者へ必ず投票するよう…

「我々は強くなければならない」:エルドアン大統領

野党CHPのクルチダルオウル党首らが、司法の「公正」などを訴えながら「行進」して以来、欧米では、トルコの「不公正な司法」への批判が、また高まりを見せていたらしい。これに対して、トルコの識者の中からは、「欧米を中心とする国際社会はどれほど公…

大団円で幕を下ろした「行進」

第一野党CHPのクルチダルオウル党首らが、「公正」を掲げて、アンカラから歩き始めた「行進」は、9日、イスタンブールのマルテペ広場で多くの群衆に迎えられて幕を下ろした。途中、事故や騒乱もなく、平和な雰囲気が維持されたことを与野双方の識者らが…

エルドアン大統領に対する識者の評価

エルドアン大統領を支持する識者の多くは、その資質として、胆力というか、何事にも動じない“堂々とした態度”を挙げている。歴史学者のハリル・ベルクタイ氏も、先日、出演したテレビ番組で、「ギュレン教団の策謀に対して、全くパニックに陥ることがなかっ…

エルドアン大統領はリベラル?

3月から4月にかけて、イスタンブールの街角で、何度か偶然に、暫く会っていなかった友人や知り合いと出会った。イスタンブールを飛び立つ直前の20日、7~8年も音沙汰がなかった友人とばったり顔を合わせた時は、『イスタンブールも見納めだから、最後…

エルドアンによる独裁化?

多分、12~3年前、ラディカル紙のテュルケル・アルカン氏のコラムで読んだ話じゃないかと思う。ドイツのある街で、交通信号の一つが「赤」のまま変わらなくなってしまった。ドライバーの多くは、信号機の故障に気が付いて、ゆっくり前進し始めたものの、…

エルドアン大統領のナチス発言

ドイツ政府をナチス呼ばわりしたエルドアン大統領の発言には、支持派の識者の中からも「ナチスが何を意味するのか解っているのか?」という批判の声が上がっている。昨日、ニュース専門局“CNNトルコ”でインタビューに応じたエルドアン大統領は、これに対…

西欧が望んでいるのは「エルドアンのいないトルコ」?

オランダの事件は、チャヴシュオウル外相やサヤン・カヤ家族社会政策相が、憲法改正の国民投票を前にして、オランダ在住のトルコ国民へ支持を呼びかけるため、現地入りしようとしたところ、オランダの当局がこれを妨げたのが発端だった。ドイツやオランダを…

4年前の今頃・・・

思えば、4年前のちょうど今頃、トルコもトルコに住んでいる私も、色々甘い夢を見ていたような気がする。イスタンブールは、2020年オリンピックの有力な候補地だった。IMF債務の完済を目前にして、経済は好調であり、AKP政権はクルド問題の解決に…

憲法改正と「クルド和平プロセス」

(1月29日) 1980年の軍事クーデターによってもたらされた憲法には、改正不可という条項が存在している。 主に「世俗主義」といった共和国の体制に纏わるもので、ラディカルなイスラム主義者、あるいは共産主義者などでもなければ、これに異議を唱え…

政界の御意見番?

憲法改正の要点となっている「大統領制」に、第一野党のCHPは、もちろん強く反対している。しかし、前党首のデニズ・バイカル氏は、保守派の論客アヴニ・オズギュレル氏のインタビューに答えて、フランスでは、大統領の権限強化に反対したミッテランが、…

エルドアン大統領と閣僚の意見の相違

トランプ大統領と閣僚らの間に、早くも意見の相違が見られるという話が伝えられているものの、トルコでは、エルドアン大統領と閣僚の意見の相違など、以前から珍しくもなかったような気がする。例えば、エルドアン大統領が、「EUなどもう必要ではない」み…

女優や俳優にも多いエルドアン嫌い

映画やテレビで活躍する女優や俳優にも、やはりエルドアン嫌いの左派が多い。最近の若手や叩き上げの役者さんはともかく、正規の芸術学部(コンセルバトゥワール)を卒業して、舞台でも活躍しているような“正統派”には、エルドアン嫌いが圧倒的に多いのでは…

映画やテレビの業界

最近は、以下のような例外も多くなってきたのではないかと思われるが、映画やテレビドラマ等の制作に携わるスタッフは、やはり、その殆どがエルドアン大統領を激しく嫌う左派じゃないだろうか。↓とはいえ、もともとそういう傾向の人たちが、この業界を目指す…

エルドアン大統領とポピュリズム

トルコでは、インテリや芸術家といった人たちの多くが、エルドアン大統領を激しく嫌っている。しかし、エルドアン大統領は、大衆的な人気に支えられて、選挙を勝ち続けて来た。この大衆は、「イスラム的な保守層」と一括りにされたりしているけれど、信仰の…

政治家には“良い人”が多い?

30~35年ぐらい前の記憶で、例によってあやふやだが、ラジオの番組で松山千春氏がリスナーから寄せられた手紙を紹介していた。手紙の内容は、「某政治家と身近に知り合ったら、意外と腰が低い好人物なので驚いた」というような話だったけれど、これに対…

ギュレン教団/上海協力機構・ユーラシア派

ギュレン教団は、70年~80年代、防共政策の一環として、軍部等トルコ国家の中枢から密かな支援を受け、こういった国家機構の内部へ、教団のメンバーが少しずつ浸透して行ったのではないかと言われている。「浸透というより、誤った国家戦略によって公然…

陰謀論

1960年5月の軍事クーデターで処刑されてしまったメンデレス首相は、長らく「独裁者」の烙印を押されてきた。しかし、内乱といった状況があったわけでもないのに、クーデターで簡単に政権の座から引きずり降ろされてしまう「独裁者」が何処にいるのだろ…

エルドアン大統領とギュレン教団

エルドアン大統領が、この数年来、進めて来たシリア対策は、結局、失敗に終わったけれど、行き詰ったと見るや、大胆な転換を図れる柔軟性は、支持派以外の識者からも評価されている。こういった柔軟性というか、現実的な対応は、「クルド和平プロセスの凍結…

エルドアン大統領が宿泊していたホテル

「7月15日のクーデター事件」から数日後、ニュース番組で、エルドアン大統領を狙ったクーデター部隊によるホテル襲撃の状況が報じられていた。 警護官の宿泊していた部屋に残る銃弾の痕などが映し出されていたけれど、部屋の様子は余り高級なホテルとも思…

暗殺のリスク

昨日(12月15日)、日本を訪れたロシアのプーチン大統領、到着が2時間以上遅れたため、その理由を巡って様々な憶測が飛び交っている。予定時間を守らない行動には、襲撃といった不測の事態を避ける狙いもあるような気がするけれど、どうなんだろうか?…

クルディスタン州

2013年の3月、エルドアン首相(当時)は、ジャーナリストらの質問に答える報道番組で、「2023年、首相だったならば、その時は州制度を提議する」と述べている。 クルド問題が解決に最も近づいた頃でもあり、エルドアン首相は、民主主義の発展と地方…

ギュル前大統領とエルドアン現大統領の気質の相違?

トルコで、「15で姐やは嫁に行き」といった話題になると、アブドゥルラー・ギュル前大統領が、よく槍玉にあげられてしまう。ギュル前大統領は、30歳だった1980年に、当時未だ15歳になったばかりのハイリュンニサ夫人と結婚しているからだ。これは…

「大統領制」と「死刑復活」の議論

現在、トルコのメディアは、「大統領制」と「死刑復活」の議論で盛り上がっているけれど、リサーチ会社の世論調査によれば、強化された大統領にエルドアン氏を望む人が60%へ達したのに対し、死刑復活への支持は40%に過ぎなかったらしい。 また、「死刑…

ジュムフリエト紙記者らの逮捕

一昨日(11月10日)、シシリーの左派ジュムフリエト紙本社近くを通ったら、警官隊が本社前の通りを封鎖して、出入りする人を厳しくチェックしていた。一週間ほど前、ジュムフリエト紙のジャーナリストらが逮捕されたため、アタテュルクの命日を期して、…