メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

クルディスタン州

2013年の3月、エルドアン首相(当時)は、ジャーナリストらの質問に答える報道番組で、「2023年、首相だったならば、その時は州制度を提議する」と述べている。

クルド問題が解決に最も近づいた頃でもあり、エルドアン首相は、民主主義の発展と地方自治の拡大に、相当な自信を抱いていたのだろう。

オスマン帝国には“クルディスタン州”もあった、オスマン帝国の後継者を自認するMHPが何故それを恐れるのか、我々はトルコの全域から支持を得ている(MHPはクルド地域から全く支持を得ていない)、等々の自信に溢れた発言を繰り返していた。

州制度の議論は、大統領制とも関連しているが、つい先日放送された報道番組に出演していた法律学者によれば、大統領制は、もともとエルドアン氏の発案というわけでもないらしい。

この法律学者を含む何人もの識者から、当時未だ首相だったエルドアン氏が意見を聞き、その過程で大統領制の構想が形作られてきたそうである。

例えば、2013年3月頃の段階では、大幅な地方自治を認めた州制度による「アメリカ的な大統領制」が構想されていたかもしれない。

あの仰々しい大統領府も、そういった構想のもとで建設計画が進められていたのではないだろうか?

2013年の3月、PKKのオジャランが平和宣言を発表し、5月にトルコはIMFの債務を完済している。

当時、トルコの多くの人たちが、華々しい未来を描いていたに違いない。それが、6月のゲズィ公園騒動で早くも陰りを見せ始め、2015年以降、一気に萎んでしまう。

現在、MHPの呼びかけに応じて再開された「大統領制」の議論には、州制度など全く出て来ていない。実現したところで、なんだか随分こじんまりした大統領制になってしまいそうだ。

大統領制に伴う憲法改正では、「クルド民族」という言葉を憲法に織り込めるのではないかと、かつては期待されていたけれど、今となっては、これも殆ど不可能に近いような気がする。

MHPばかりでなく、AKPの党内からも猛烈な反発を受けるだろう。

さすがのエルドアン大統領も、州制度はとうに封印しているようだ。「クルディスタン州」なんて、また言い出したら、それこそ大変なことになる。

2023年、「大統領制によって強化された大統領」にエルドアン氏が就任していたとしても、州制度を提議するのは絶望的に難しいと思う。2023年まで、もう6年しか残っていない。

2013年3月:州制度について語るエルドアン首相


RECEP TAYYİP ERDOĞAN 2023 TE EYALET SİSTEMİNE GEÇEBİLİRİZ DEDİ