メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

国民投票の結果

国民投票の結果について、少し周囲の人たちの見解を聞いてみた。

まず、スザンナさんは、票差が僅かだったことを残念がっていた。圧倒的な大差で反エルドアン派を黙らせたかったらしい。

一方、保守的なムスリムである近所の家電修理屋さんは、「余り大差がつくと、反対派は絶望を感じて何をしでかすか解らないから、あのぐらいで良かったんじゃないの?」なんて言う。

実際、反対派にとって、あの数字は、2019年に予定されている「改正憲法による大統領選」に大きな望みを託せるものじゃないだろうか?

議員内閣制を続ける限り、第一野党のCHPが政権に就く可能性は殆どないように思えるが、過半数を取らなければならない「大統領選」ではどうなるか解らない。エルドアン大統領もAKPも、結構重いリスクを背負ってしまったような気がする。

とはいえ、2014年の大統領選の得票率も、今回と殆ど変わらない52%だったのだから、特にリスクが増えたわけではないかもしれない。

また、51.4%という得票率は、2015年11月の総選挙でAKPが得た49%に極めて近いため、改憲に協力したMHPの支持層の多くが、賛成票を投じなかったのではないかと指摘する声も聞かれる。

最近、帰国の準備等で忙しく、新聞にも余り目を通していなかったけれど、投票日が迫ってから、大統領府のアドバイザーが「州制度」に言及した論説を明らかにして、ちょっと揉めていたらしい。

クルド人地域の自治を認める「州制度」には、トルコ民族主義のMHPが猛反発していたので、この論説がMHP支持層の離反を促してしまったかもしれないと分析する識者もいる。


今回、エルドアン大統領は、「州制度」の可能性を否定しながら、「アドバイザーではなく、私の話を聞いてくれ」と火消しにやっきとなっていたが、2013年までは、自ら「クルディスタン州」などと刺激的な言葉を使って、州制度を論じていたのである。

その州制度がアドバイザーによって蒸し返された所為かどうかは解らないものの、クルド人地域からは相当数の賛成票が出ている。

考えようによっては、60%といった高い得票率で、MHPの影響力が強まるより、この結果の方が、今後のクルド問題の解決に向けて遥かに好都合だろう。

まさかとは思うけれど、それを狙って、アドバイザーの論説を密かに承認していたとしたら、エルドアンという人は、もの凄い政治家である。

 

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