メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

「大統領制」と「死刑復活」の議論

現在、トルコのメディアは、「大統領制」と「死刑復活」の議論で盛り上がっているけれど、リサーチ会社の世論調査によれば、強化された大統領にエルドアン氏を望む人が60%へ達したのに対し、死刑復活への支持は40%に過ぎなかったらしい。

また、「死刑復活」について、AKPのハヤティ・ヤズジュ氏は、ギュレン教団の司法関係者による“でっちあげ”とされている「エルゲネコン軍事クーデター計画事件」を例にあげ、「死刑があったら、取り返しのつかないことになっていたかもしれない」と語ったそうだ。

こうしてみると、エルドアン大統領の「死刑復活」提議は、やはり、EUを揺さぶる為のブラフだったのではないかという気がしてくる。

エルドアン大統領は、他にも「EUはトルコの加盟を認める気があるのかないのか明らかにしろ」とか「EU加盟申請取り消しの是非を国民投票にかける」といった殆どブラフとしか思えない発言を繰り返してきた。

これはトルコの国内でも、「あまり品の良い政治手法じゃない」と批判されているようだけれど、EU側の二枚舌も相当なものだから、対抗しようとすれば、これぐらいは仕方ないかもしれない。

一方、「大統領制」の為の憲法改正に向けた話し合いが、AKPと野党MHPの間で持たれていて、その過程でAKPの示した議案の一部が、メディアに漏れ、これもまた多くの識者から厳しく批判されている。

この議案によれば、大統領は司法と議会もほぼ支配することが可能になるという。しかし、おそらくこれは「値引き」の余地をわざと残した戦略的なものであり、交渉の末、ある程度納得できるラインに持って行くつもりらしい。

このように分析した識者は、それでも「商売ではなく、国家の重要な議題なのだから、自分たちが望んでいるものを最初から示すべきだ」とAKPの態度を非難していた。

とはいえ、野党側も、同じような駆け引きで、交渉を進めるだろうから、なかなか難しいところであるかもしれない。