メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

人口でインドに抜かれる中国の「一人っ子政策」と少数民族

1997年、大阪に住んでいた頃、アルバイトの職場に上海出身のおばさんがいた。ある時、おばさんは中国語で嬉しそうに話してから電話を切ると、「良かったわ。上海の友人が少数民族だったのよ」と言ったのである。

何事かと思ったら、当時、中国では少数民族の場合、大学への入学が楽になる制度があるため、大学進学を控える子供のいる親は、自分たちの出自を調べてみたらしい。2~3世代前でも少数民族であることが明らかにされれば、その対象になったからだという。おばさんの友人は有難いことに少数民族だったそうだ。

日本では考えられない話だと思う。出自を調べて「日本人じゃなかった」と喜ぶ人が何処にいるだろう?

その友人がどういう少数民族だったのか聞き洩らしたけれど、例えば、満州族などは、かつての支配階級だったため、平均的な教育水準が、もともと漢族より高かったらしい。その満州族も対象になっていたのだとしたら、なんだかお粗末な制度である。

満州族は、支配民族が少数民族を同化させるという類型にも当てはまっていない。満州族は征服して支配した民族に同化してしまった。

それから、少数民族に関しては、「一人っ子政策」の適用も二人までに緩和されていたそうだ。当時の中国は、少数民族の問題を熱心に取りあげていたのである。

一人っ子政策」は、共産主義と同様、科学的な計算に基づき、「人口爆発」を抑えるために始めたという。

しかし、その後、インドが産業化・都市化に伴って、自然と出生率を下げて行ったのを見れば、中国もあれほど無理をしなくても良かったような気がする。

中国は間もなく人口でインドに抜かれてしまうばかりか、極端な高齢化の危機にも直面している。「一人っ子政策」などやるべきではなかった。

例えば、中国の国家が行なってきた重大な人権侵害の一つは、この「一人っ子政策」じゃないだろうか? 

以下に貼付した「福建からイズミルへ、そして東京へ。」という駄文に登場する福建省の友人は、子供を2人作ってしまったため、警察に呼ばれて強制的にパイプカットされてしまったそうである。

しかし、人権にうるさい西欧が「一人っ子政策」を非難したという話も余り聞いていない。どうやら、自分たちの都合次第で何も言わなくなるらしい。

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幸せなクリスマスの夢

《2020年12月25日付け記事の再録》

今朝(2020年12月25日)、夜勤から帰って朝食を取り、1時間半ほど横になったら幸せな夢を見た。

私は暗い夜道で自転車を走らせている。ライトが故障して前が良く見えずに困っていると、後ろから自転車に乗った女性が近寄ってきて前を照らしてくれた。

夢の中の私は、その女性が誰であるのか解っていて、「ありがとう」と言いながら振り返る。そこで目が覚めた。不思議なことに、その後でいくら考えても誰だったのか思い出せない。カーテンの隙間から入り込む日差しが眩しかった。

それでも幸せな気分だけは残っていて、少し横になったまま束の間の幸福感に浸ってから起き上がった。そういえば、今日はクリスマスである。

「日本のクリスマス」は今日で終わり、明日にはクリスマスツリーの多くも片付けられてしまうらしい。

イスタンブールでは、年明けの6日まで「クリスマス」が続く。間借りしていたルム(ギリシャ人)のマリアさん宅でクリスマスプレゼントを交換し合ったりするのは12月31日だった。

そのためか、クリスマスから年末年始にかけては、イスタンブールにいた頃がとても懐かしく感じられる。

東方正教会アルメニア正教会では、クリスマスミサの期日が異なっていたので、双方のミサへ出かけたりした。

いずれも荘厳な雰囲気の中で美しい讃美歌が歌われていたが、特にアルメニア正教会の賛美歌はたとえようもなく美しかった。クリスマスをまたイスタンブールで過ごすことが出来たら素晴らしい。

2012年12月25日
イスタンブール:コンスタンティノポリ総主教庁聖ゲオルギオス大聖堂)

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来年の大統領選挙/親米と反米の闘い?

トルコの野党勢力は、6カ月後に迫った大統領選挙でエルドアン氏が敗北すると断言している。しかし、誰が勝利するのかは明らかにされていない。というのも、野党連合の統一候補は未だ決まっていないからだ。

野党連合は、共和人民党(CHP)・良党(İYİ Parti)・民主党(DP)・幸福党(SP)・民主進歩党(DEVA)・未来党(Gelecek Parti)の6党から構成されているものの、共和人民党(CHP)以外の政党の得票数を合わたところで、共和人民党(CHP)の半分にも満たないため、当然、共和人民党(CHP)の党首クルチダルオール氏が統一候補になるのではないかと見られていた。

しかし、以下の「イスタンブール市長に禁固刑の判決」という駄文でもお伝えしたように、良党(İYİ Parti)のアクシェネル党首が、イスタンブール市長イマムオール氏への強い支持を明らかにしたため、今後の展開が注目されている。

統一候補がなかなか決まらない要因としては、6党の政治思想に統一性が見られないことが挙げられている。

アタテュルクが創設した共和人民党(CHP)は政教分離主義的な革新左派の政党だが、他の5党はいずれも右派の政党と言えるだろう。

良党(İYİ Parti)は、現在、エルドアン大統領の公正発展党(AKP)と連立与党を組んでいる民族主義者行動党(MHP)から分派した民族主義的・保守的な政党であり、民主進歩党(DEVA)と未来党(Gelecek Parti)も公正発展党(AKP)から離脱したアリ・ババジャン氏とダヴトオール元首相による保守的な政党。

幸福党(SP)は、イスラム主義の政党と言えるかもしれない。この幸福党(SP)から、エルドアン氏を始めとする改革派が分かれて立ち上げたのが公正発展党(AKP)なのである。

そのため、「6党に共通しているのは反エルドアンだけじゃないのか」と揶揄されたりしている。

一方、最近、様々な局面でエルドアン大統領を支持している祖国党(VATAN Partisi)のドウ・ペリンチェク党首は、大統領選挙への出馬を表明しているものの、反野党連合では、与党と立場を共にしているようだ。

共産主義者のドウ・ペリンチェク氏が率いる祖国党は、もちろん左派の政党である。

このように、与党側と野党側に左派と右派が入り乱れている状況を見れば、「政教分離主義的な左派」「保守的・イスラム的な右派」といった区分けが既に意味を成していないことが解ると思う。

左派とか右派ではない、「グローバル派と民族派の争い」などと言われてもいるけれど、これを親米派に反米派として読み解く識者もいる。

実際、AKP政権は、野党連合を「米国の傀儡」と非難してきた。しかし、クルチダルオール氏が支援を求めて欧米各国を訪問しているように、野党連合は「親米」であることを隠そうともしていない。

トルコの経済は、AKP政権がギュレン教団の影響下にあった2003年~2012年頃までは順調だったが、IMFの債務を完済し、米国との齟齬が生じるようになった2013年以降、急速に悪化してきた。これを踏まえて、クルチダルオール氏は、再びIMFの支援を受けても良いと公言している。(訂正:「良い条件で融資を受ける」と述べただけで、「IMF」とは言ってませんでした。)

おそらく、支持者らの中には、「エルドアンが大人しく米国の言うことを聞いていれば、経済も良くなってEUに加盟できた」と思っている人たちがいるのだろう。

彼らは、もちろん「IMFの頸木」なんてことは意に介していない。EU加盟のために北キプロスと南東部を手放さなければならなくなったとしても一向に構わないようである。

オスマン帝国が東部~南東部の割譲を認めるセーヴル条約に調印した当時、帝都コンスタンティニイエ(イスタンブール)には、これに何の抵抗も感じなかった人たちが少なくなかったらしい。

このセーヴル条約を覆すために救国戦争を導いたのがアタテュルクであれば、現在、アタテュルクの立場にあるのはエルドアン大統領ということになりそうだ。来年の大統領選挙を救国戦争に擬えるエルドアン支持者もいる。

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イスタンブール市長に禁固刑の判決

イスタンブールのイマムオール市長が、選挙管理委員を「バカ」と言って侮辱した罪で禁固刑の判決を受けたという。

トルコの選挙管理委員会はヤルグタイ(大審院)等の判事らによって構成されているため、法廷侮辱罪のような認識になるのかもしれないが、2年7カ月の禁固刑はどう考えても重過ぎる。

しかも、イマムオール氏が「バカ」と言った相手は選挙管理委員ではなかったとも言われている。トルコのメディアをざっと眺めてみても、このように判決の不当性を指摘する声が多く出ている。

しかし、上告して続く裁判は未だ終わっていないので、今後の経過を見極める必要があり、現時点で大騒ぎするのは政治的なショーに過ぎないと批判する人もいる。

一方、この判決自体に政治的な意向が働いていたのではないかという疑念もある。

エルドアン派の多くは、来年の大統領選挙で強力なライバルと成り得るイマムオール氏の行く手を阻むために、エルドアン政権が司法に介入したと主張している。

これとは逆に、大統領選挙の候補にイマムオール氏を擁立するための策謀という主張もある。

野党側の統一候補は、最大野党CHP(共和人民党)の党首クルチダルオール氏ではないかと見られていたが、この一件により、イマムオール氏の名が急浮上したからだ。

予てよりイマムオール氏を推していた良党(İYİ Parti)のアクシェネル党首(女性)は、判決が出るや否やイマムオール氏のもとへ駆けつけ、イマムオール氏に抱きついて喜んでいる。

イマムオール氏も不当な判決に悲しむどころか、喜色満面でアクシェネル党首を抱きかかえていた。

ところが、ドイツに滞在していたクルチダルオール氏はその場に居合わせることもできなかった。

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イマムオール氏はイスタンブール市長選挙にCHPから立候補したものの、元来のCHP党員ではない。

そのため、CHPの内部には、外様のイマムオール氏と他党のアクシェネル氏が喜んでいる姿に不快感を催す人も少なくないだろうと言われている。

これが事実であれば、判決の一件は「野党連合を内部分裂させるためにエルドアン政権側が仕掛けた」と説くことも可能であるかもしれない。

ところで、エルドアン政権とは距離を取っているものの、反野党連合、反イマムオール氏では、政権への支援を惜しまないドウ・ペリンチェク氏率いる祖国党の機関紙と言えるアイドゥンルック紙のイスメット・オズチェリック氏は、時事討論番組で「これはイマムオール氏を擁立したい米国の策謀だ」と述べていた。

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ここまで来ると何だか妄想のような気もするけれど、ドウ・ペリンチェク氏は、2019年にも、イスタンブール市長に当選したイマムオール氏を「米国の手先」と罵っていたのである。

ドウ・ペリンチェク氏の祖国党は、トルコ軍と深い関係があるとされている。

現在、トルコ軍はテロ組織壊滅のため、陸軍のシリア越境作戦を準備しているという。来年の大統領選挙で親米的な候補が勝った場合、作戦に支障を来しかねないため、トルコ軍がエルドアン大統領の再選を強く願っているのは間違いなさそうである

それを考えたら、私も様々な妄想を巡らしたくなってしまうが、この辺で止めておくことにする。

 



 

「妄想は知的行為全般の母である」(『田中宇の国際ニュース解説』より)

「コロナ騒ぎ」が始まって以来、私はこの騒ぎに何か裏があるのではないかという陰謀論めいたことも考えて来たけれど、上記の田中宇氏の論説「米諜報界が中国のために作る世界政府」は、そんな私の小さな想像力など吹き飛ばしてしまう迫力である。

田中氏は、コロナの発生自体が、米国の自滅を狙う「隠れ多極主義者」という米国内勢力の陰謀ではないかと論じている。

私も以下の駄文に記したように、米国の製薬会社等がさらなる利益を上げるため、コロナ騒ぎを煽っているのではないかと想像を巡らせてみたものの、まさかコロナの発生自体に陰謀があるとは思っていなかった。

しかし、コロナを作り出したのは米国であるという説は、当初より見られたし、最近は取り上げる人も多く、荒唐無稽な陰謀論として片付けられない様相になってきた。とはいえ、私は未だ信じ難い気持ちである。

一方、鹿児島の医師、森田洋之氏は「財務省が『反コロナ・反ワクチン政策』のノロシをあげた3つの理由 」として、財務省官僚の主張を取り上げている。

こちらは陰謀に纏わる話じゃなくて、実際、コロナ対策のためにどのくらいの国家予算が使われたかに基づいて解説されている。その額、令和2年度だけで77兆円だそうである。

おそらく、その中から相当な金額が米国の製薬会社へ流れてしまったのだろう。これほど米国の製薬会社を喜ばせた国は、他(米国も含む)にないかもしれない。

あの異常なコロナ対策を続けていた中国は、自国製のワクチンを使っているから、少なくとも米国製薬会社を儲けさせてはいない。それはロシアも同様じゃないかと思う。

ロシアと言えば、田中氏はウクライナ侵攻も「隠れ多極主義者」が米国を自滅させるために仕組んだ陰謀という説を展開している。

こういった陰謀論を「妄想」と言って、端から無視する人も多いだろう。そもそも、田中氏が論説の中で、自ら「・・・仮説は、私の思いつき(妄想、仮説)である」と断っているくらいである。

しかし、田中氏は、それに続けて「妄想は、あらゆる分析や研究、開発、発明、哲学など知的行為全般の母である」と主張している。確かに、妄想もあれほどスケールが大きくなれば何か生み出す原動力になるかもしれない。

私も「妄想」と断って、以下のように様々な自説をここに書いてきたけれど、私のちっぽけな妄想では何も生まれないだろう。

どうやら、私の妄想の枠はかなり狭いようだ。例えば、田中氏の「隠れ多極主義者」という思いつき(妄想、仮説)には、ちょっと目面くらってしまう。

トルコにも、「世界は多極化して行く」と論じる識者は少なくないけれど、多極化を促進させるかのような米国の失策については、米国の愚かさを指摘するぐらいである。私も失策の要因は愚かさじゃないかと思う。(例えば、余りにも杜撰だった2016年7月のトルコ・クーデター計画の失敗)

ウクライナの情勢もどうなっているのか良く解らないが、米国のプロパガンダほどには巧く行っていないのではないか?

GDPが韓国よりも少ないロシアの経済的な弱さが強調されているけれど、あれはサービス業もGDPに含まれているからだとエマニュエル・トッド氏が指摘していた。確かに粗鋼の生産量では、ロシアが韓国を上回っている。相変わらず重工業には強いらしい。石油を始めとして資源も豊富である。

ウクライナの発電施設はロシアの攻撃により半分近くが破壊されてしまったとウクライナの閣僚が明らかにしている。これから厳冬期を迎えて、下手をすれば凍死者が出てしまう恐れもある。不利な状況に追い込まれているのはウクライナ側、そして欧米の方であるかもしれない。

トルコのサバー紙の主筆メフメット・バルラス氏も「ウクライナ侵攻によってロシアを泥沼に引っ張り込むつもりだったが、気がついて見たら、泥沼に嵌ったのは欧州の方である」と論じていた。

いずれにせよ、田中氏が論じているように、何でも米国の思い通りになる時代は既に終わっている。これは確かじゃないだろうか。

そして、今までの常識が通用しない新しい時代を迎えるのだとしたら、常識にとらわれない妄想を働かせてみなければならなくなる。

歴史が大きく変わる時こそ、まさしく「妄想は知的行為全般の母である」と言えるのではないかと思う。

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「欧米人だったら、とっくに怒り出している」?

youtu.be

東京の松屋銀座に出店した「カラキョイ・ギュッルオール」のムラット社長は、並々ならぬ親日家であるようだ。そのため、欧米ではなく日本を海外出店先に決めたらしい。

上記のYouTube動画でも、その熱い思いを語っているけれど、そこには日本の文化への敬意、造詣の深さが感じられる。

私と同世代の「親日家」には、以下の駄文にも記したように、多少、日本を見下したところがあった。おそらく、欧米の視点で日本を見ていたからだろう。

それは、私たち日本人も同様だった。今でも同世代には相変わらずトルコを見下しているような人たちが少なくないかもしれない。しかし、若い世代には双方とも変化が見られると思う。

2010年、私がコーディネーターを務めた日本の紀行番組で、「カラキョイ・ギュッルオール」を紹介したけれど、もちろんトプカプ宮殿等々の名所も番組の大きな見どころとなっていた。

そのトプカプ宮殿の撮影では、事前に申請を済ませていたにも拘わらず、宮殿管理事務所側の手違いにより、かなりの時間、事務所の片隅で待たされてしまった。

この時、管理事務所の責任者である年配の女性は、準備を怠っていた若い部下をたしなめながら、「日本人で良かった。こんなに待たせてもニコニコしているでしょ。欧米人だったら、とっくに怒り出しているわよ」と言ったのである。

トプカプ宮殿には、欧米からも多くの取材班が訪れていたに違いないが、どうやら彼らは随分と横柄な態度を取っていたようだ。欧米人は、トルコを少し見下すどころか、完全になめきっていたらしい。

多分、「カラキョイ・ギュッルオール」にも、そういう欧米の取材班一行が来ていたのではないだろうか? ムラット社長が、欧米ではなく、日本への思いを深めて行った背景には、そんな要因も潜んでいたかもしれない。

私たち日本人に、アジアの国々を見下すようなところがあったとしても、欧米人ほどではなかったはずである。そういった紳士的で生真面目な気質を今後も友好の進展に活かせたらと思う。


 

駅弁食べて旅情をそそられる

昨日、姫路駅の構内にある食堂で「幕ノ内弁当」を食べた。

本来は駅弁として店頭で販売されており、これを買ってから新幹線の改札を通る人も多いと思う。

この食堂では、以下の駄文でご紹介した「関西シウマイ弁当」を食べたこともある。

店頭で購入した弁当を食堂の席で広げても、お店の人がサービスにお吸い物を出してくれる。

食堂には麺類やおでんなど色々なメニューがあり、弁当を食べている人は私以外に見当たらなかった。やはり、駅弁は車中で食べるのが道理だろう。

店内は列車の車内を模した装飾が施されているうえ、駅に列車が発着したりすると、その振動が直に伝わって来て、なんだか旅情をそそられてしまう。

何処かのんびりと旅がしたいものである。姫路からだったら、城崎温泉辺りが良いかもしれない。

駅弁とビールを買って特急に乗り込み、車窓の景色を眺めながら飲んで食べたら最高じゃないかと思う。

そんな贅沢が出来る余裕は今のところ全くないけれど・・・。